第5話

ところがです。


火あぶりにされそうになって、

逃げてきた魔女が、

ぐんぐん駆け寄ってきました。


「この死神様は、

永遠に私のもの。

あんたなんかに渡さない!」


魔女は息を切らしながら、

そう叫ぶと、

ありったけのエネルギーを使って、

紳士姿の死神に魔法をかけました。


すると、

アベルはたちまち石像になりました。


そして、

魔女は力尽きたのか、

そのまま倒れ込むと、

妖しい光を放ちながら、消えていきました。


アリスは、

石像になったアベルの頬を撫でながら、

声を震わせながら言いました。


「アベル、アベル。

せっかく再会したのに、

もうお別れなの?

なんとか言って!

その唇を動かして!」


しかし、

石像になったアベルは、

当然、何も言いません。


アリスは続けて言いました。


「アベル、アベル。

これで永遠の別れなの。

あなた、死神でしょ。

魔女の魔法ぐらい、

打ち破って、元に戻ってよ!」


しかし、

石像になったアベルは、

当然、何も言いません。


「ああ、アベル。

もう戻らないのね。

思えば、あなたとの駆け落ち、

いいえ、このデート楽しかったわ。

私にとっては最高の思い出よ」


しかし、

石像になったアベルは、

当然、何も言いません。


アリスは、

石像になったアベルに、

くちづけしました。


しかし、

石像になったアベルは、

石像のままでした。


(やっぱり、ダメか)


アリスはしばらく考えて、

冷静な判断をしました。


(今、宮殿は王女不在。

このままだと、

国の治安に関わるわ)


(だから私、宮殿へ戻る!

やっぱり私には、

王女としての責任があるのよ)


そうして、

アリスは宮殿に向かって、

歩き始めました。


アリスは何度も振り返りましたが、

石像になったアベルは、

石像のままでした。


(さようならアベル。

さようなら私の恋)


そうして、

アリスは宮殿に向かって、

走り去っていきました。






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