第2話

アリスはびっくりしました。


「まさか、カイン様が死神?

全く気付かなかったわ。

さすが死神ね。

そうすると、

今夜の駆け落ちも、

王女である私を、

連れ去ろうとしていたってことなのね」


ペガサスは瞠目どうもくして言いました。


「さすが王女様。

仰るとおりです。

しかし、宮殿の警備体制が思った以上に厳しかったので、

王女様の拉致が難しそうだと考えた死神は、

私をこの部屋へ送り込んだ、

そういういきさつだったのです」


アリスは少し考えて言いました。


「なるほど。

そういうことだったのね。

私、危うく死神の餌食になるところだったわ。

ペガサスの魔女さん。

勇気を振り絞って告白してくれて、

ありがとう」


ペガサスは申し訳なさそうに言いました。


「いいえ。

私は王女様に感謝されるようなものではありません。

むしろ、

王女様の命を狙った死神の共犯者なのですから」


アリスは優しく優しく言いました。


「ペガサスの魔女さん。

これからどうするの?

あなたにかかった呪文を解くことは出来ないけれど、

よかったら、この宮殿の庭園で暮らさない?

あの死神もこの宮殿の中には、

何か結界のようなものを感じて、

入って来れないみたいだから」


ペガサスは欣喜雀躍きんきじゃくやくして言いました。


「そうさせていただけると、

私としては、願ったり叶ったりです。

実は、日頃から、

死神のDVに苦しんでおりましたので、

この宮殿の庭園をシェルター代わりにして、

毎日暮らせたら、どんなに幸せか……」


アリスは、

女神のようにほほえんで言いました。


「そうしなさいよ。

私だって、毎日、

あなたと庭園で遊んだり出来たら、

最高だもの」


アリスの神対応によって、

ペガサスの魔女は、

宮殿の庭園で、

死神の恐怖からまぬがれて、

過ごすようになりました。


一方、

恋人の魔女に逃げられて、

王女の拉致にも失敗して、

意外とメンタルの弱かった死神は、

地獄へ傷心旅行に出かけたと、

アリスは風の便りに聞いたのでした。


アリスは庭園で、

ペガサスの背中を撫でながら思いました。


(恋って本当に盲目ね。

運命の人だって思うと、

バイアスがかかって、

冷静な判断が出来なくなるわ。

この恋は、良い勉強になったと思って、

あんなやつのことなんか、

さっさと忘れて、

もっと大人の女性にならなくっちゃ!

そしてこの国を守らなくっちゃ!)


そのとき天気は晴れていたのですが、

一度だけ幻聴のような雷が鳴りました。


アリスは驚きましたが、

すぐに落ち着きを取り戻しました。


そして公務のため、

ペガサスに「またね」と言って、

宮殿の方に歩いて行きました。


その後ろ姿を、

ペガサスは穴が空くほど見つめていました。






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