王女アリスの駆け落ち ~お相手は魔女を虐げる死神でした~

滝口アルファ

第1話

月光の蒼白く震える夜。


王女アリスは、

宮殿の自分の部屋で、

眠ったフリをしていました。


(みんな、眠ったかな……)


アリスは目を開けると、

ベッドから静かに起き上がりました。

すると突然、

ペガサスが現れて、言いました。


「王女様、

こんな夜中にどこへ行かれるのですか?」


アリスは驚きました。


「あんた誰?

どうやってこの部屋に入ってきたの?

不法侵入よ」


アリスのツッコミに、

ペガサスは少し狼狽うろたえながら答えました。


「王女様。

もしかして、

この宮殿から脱出しようと、

考えておられるのではないですか?」


アリスはギクッとしました。


「どうしてそれを知っているの?

誰にも言っていないはずなのに」


ペガサスは諭すように答えました。


「王女様。

私はこの宮殿を何百年も見守っているのです。

反抗期になられた王女様の考えそうなことくらい、

手に取るように分かります。

王女様。

今夜、駆け落ちするつもりでしたね」


アリスはドギマギしました。


「なんでそれを知ってるの?

手紙の中の暗号で、

カイン様と秘密裏に決めたことなのに」


ペガサスはほほえみました。


「王女様。

勘違いなさらないでください。

私は、むしろ、

この駆け落ちのお手伝いをしたいのです。

こんなに月が綺麗な夜に、

私の背中に乗って、

宮殿の塀の外で待っている

カイン様のところまで、

夜空を飛んで、

お送りしたいのですが、

いかがでしょうか?」


アリスは嬉しそうに言いました。


「ありがとう。

まさに渡りに船ね。

お願いしようかしら。」


ペガサスが翼を下げて、

アリスが乗るのを待っていると、

アリスの笑い声が聞こえてきました。


「ふふふふふ。ふふふふふ。

この私が、そんな安易な誘導に

引っかかると思った?

私も舐められたものね。

私を乗せて、

そのままあの世までさらおうという魂胆でしょ。

あなた、

ただのペガサスじゃないわね」


ペガサスは、

平静を装って答えました。


「いいえ。

私は本当に王女様のためを思って……」


アリスは遮って言いました。


「もういいわ。

私は騙されない。

あなた、本当は魔女なんでしょ。

ペガサスに化けた魔女なんでしょ。

もう白状しなさい!」


ペガサスは、

深く深く感じ入ったようでした。


「さすがは、未来の女王様。

なんという慧眼けいがんの持ち主!

参りました。

白状いたします。

ご推察のとおり、

私は、魔女です。

ペガサスになる呪文をかけられた魔女です。

王女様。

あなたをこの宮殿から拉致してくるように

命令されたのです」


アリスは、一呼吸して言いました。


「そうだったの。

可哀想なペガサスさん、

いいえ、魔女さん。

いったい、あなたにそんな命令をしたのは、

誰なの?」


ペガサスは震えながら答えました。


「そっ、それは、

死神です。

そしてその死神は私の恋人です。

さらに申しますと、

あなたが駆け落ちしようとしようとしていた

あのカイン様こそ、その死神なのです」



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