第5話
現在時刻12時ジャスト。
きっちり11時に起き………れなかったです。
5分遅くなりましたが、まぁリリースには間に合ったし良いか。
さてと。始めますかね。
『Hello world……』
『データ読み込み中……』
『ゲームを選んでください』
今日届いたゲームを選択する。
『ゲームが選択されました』
『プレイヤーの見た目を設定して下さい』
目の前に俺と瓜二つの顔を持ったアバターが写し出される。
身長175㎝ほとで普通以上イケメン以下のそこそこの顔。リアルでの俺の身体そのものが写し出される。
基本的に体は弄ってない。違うのは髪の色を灰色にして、瞳を濃紺色にしたぐらい。
弄らなくてもいいし、このまま行くか。
俺は外見の設定を全て飛ばしてスタートを押す。
『ダイブまで残り5秒』
『4』『3』『2』『1』
『ダイブを開始』
『めをとじると、なぜかこころがおちついた』
『なぜか、なつかしさをかんじた』
目を開けると、そこには一面の麦畑が広がっていた。
「ここは、一体……それにさっきの声……」
「ふふ。ここは契約精霊の心情世界。貴方たち開拓者が契約する精霊の心を映した世界よ」
惚けている俺の疑問に少女の声が答えてくれる。声の方に振り向けば、そこには腰まである長い白髪に、空色の瞳、白とピンク、青の色をした花の形をした髪飾り、白と所々にピンクと青の装飾の入ったワンピースの様な服を着た少女が、柔らかく微笑みながら立っていた。
精霊と言うから小さい姿を想像したが、150㎝位の背丈で、髪の間から覗く尖った耳と、本人から精霊と聞かなければ普通の少女にしか見えない。
「ふむ。君が俺のナビゲーションピクシー。こっちで言う契約精霊か?」
「ええ。でも、契約する前にいくつか聞かせて欲しいの。精霊でもわたし達は生きてるから」
「あぁ、構わない。契約、と言うならいずれかの代償があるのは定石だ」
「ふふ。ありがとう。それじゃぁ、一つ目ね。貴方はこの光景を見て、どう思うかしら?」
俺はもう一度一面の麦畑を見る。どこまでも続く大地は、麦色の海に沈んでいる。空に浮かんでいる太陽の光に反射する黄金色の海。
「ただただ心が安らぐと言うか、何だろうな。何故か懐かしく感じる」
その答えに満足したのか、柔らかく、満面の笑みを浮かべる。
「じゃあ次に、貴方はこの開拓の旅に何を望むの?」
「何も。ただ俺は俺として旅をして、戦って、休んで、遊ぶ。それだけだ。何かの使命や運命は背負わない。ただ、託されれば乗せるけどな」
「ふふっ♪あなたって変わった考えをするのね。でも、とても優しい考えだわ」
この答えは即座に出た。あいつから開拓だと言われた時から考えていた。開拓とはなにか。答えは出なかったが、出ないままでも良いと、俺は思った。なぜかは………また今度で。
「それじゃあ、あまり待たせてもいけないから、最後に一つ。貴方は『愛』を信じるかしら?」
言葉に詰まる。俺は『愛』を信じるのか。答えは出ている。でも、それでもと考えてしまう。
多分、俺は………。
「俺は『愛』を信じてはいないし、あるとは思っていない」
そう言うと、少女は悲しそうな顔をする。
「でも、信じたいとは、思っている。信じることができればと、思う」
「そう」
少女は優しく微笑む。
答えとしては良かったのだろう。妥協点かな。
「うん。もう聞きたい事は聞けたわ。契約をしましょう」
「契約の方法が分からないのだが」
「簡単よ」
そう言って、少女は両手を前に出す。その手のひらには、二つの指輪があった。
「わたしの契約方法は、この指輪を互いにはめる事。ね、簡単でしょう」
「ちょっと待て。一応聞くが、どの指だ?」
「左手の薬指♪」
「oh………」
ちゃっと待てよ。これ、完全にアウトだろ。
いくら精霊だからって、ぱっと見は普通の少女だぞ?特殊性癖持ちなんて思われたくないのだが?…………まぁ、ちゃんと精霊ですって言えばいいのか?そう名言しとけばいいか。それに精霊はみんなこうかもしれないしな。
一縷の希望に縋ろう……。
「わかった。契約しよう」
「ふふ、そうこなくっちゃ。ほら手を出して」
そう言って、少女は俺の手を取る。
小さくて柔らかく、温かい手だ。
「『慈愛』の精霊、フィルシアは……あ、貴方の名前をまだ聞いてなかったわね。教えてくれるかしら?」
「………一番最初に聞く事だと思うんだけどな。
「名七……。良い名前ね。わたしはフィルシア。シアって呼んで♪」
「あぁ。分かった、シア」
シアは気を取り直してと俺の手をもう一度取る。
「『慈愛』の精霊、フィルシアは
そう言って、俺の左手の薬指にはめる。
次は貴方の番よ。
そう言って指輪を渡される。さっきのを倣えば良いのか?と考えてると、目の前にウィンドウが。……………ぇ、これ言うの?
「星々の放浪者、名七は、契約精霊、フィルシアを数多の星の開拓の旅の相方とし、共にある事を誓う」
そう言ってから指輪をシアの左手の薬指にはめる。これ、聞き方によってはあれに……考えるのやめよう。そうしよう。
「ふふっ、わたし今身長が低くて良かったって思うの」
「?」
「だって貴方がわざわざしゃがむなんて思わなくって。これって物語に出てくる騎士がお姫様にする誓いの姿勢と同じでしょう?」
「………あ」
流石に立ったままではやりづらく、片膝立ちではめたのだが。
側から見ればそう見えても仕方ないだろう。
「ようこそ、【Planetes stories】へ。これからよろしくね、わたしの騎士様♪」
「……はぁ。まぁよろしく。騎士は様にならんだろうけどな」
こうして、無事契約を結ぶことが出来た。
ん?契約の代償って……………………やめろ。考えるな。指輪にあの契約の宣言でそう思ってるだけで違う可能性だってある。
あるったらある。
「ちなみに、契約の代償としてわたし達は離れる事はできないの♪」
「は?」
「ずっと一緒ね、名七♪」
「Oh my God………」
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美少女と一緒なんだから幸せだろが。あぁ?
前話において、神域の刀術とは。
【侍魂】には武術の上達度によって、『見習い』『初級』『中級』『上級』『達人』とあり、更にその先。神殺しを成した者にのみ扱える領域のことを『神域』とし、扱える者のことを『神域者』と言う。条件としては種族『神族』又はそれに類する生物・存在の技を見る、受ける、その上で生き残り、模倣する事。
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