第6話

心情世界から出ると、街の中にいた。

こう言うゲームではありがちの中世ヨーロッパをモチーフにした街並み。

周りには沢山のプレイヤーとNPC(ノンプレイヤーキャラクター)がいる。

おそらくここが、ゲームの一番最初の地点なのだろう。


「無事に到着ね♪ここが始まりの街【スタース】よ。どう?綺麗な街並みでしょう?」

「あぁ、確かに綺麗な街並みだな。あと活気もいい」

「でしょでしょ?あとこの街には––––って、あら?」

「ぬ?」


シアと話していたら、ゲームの通知が鳴った。

ウィンドウを開いてみると、そこには一通のメールが届いていた。




『差出人:フライ

よぉ、ちゃんとログインはできたか?

僕はバッチリできたぜ。

このメール見たら中央の大聖堂で集合な。

ナビゲーションピクシーがいるから、

いくら方向音痴を極めたお前でも着けるだろ。

待ってる』




フライというのが俺をこのゲームに誘った翔斗の事だ。分かりやすくて結構。俺?俺も分かりやすいだろ?名七名前は七。な?


「なぁシア。大聖堂ってのはどこにあるんだ?」


俺のメールを覗き込んで見ていた(一生懸命に背伸びしてたので少し屈んで見せた)シアに聞いてみる。


「大聖堂はここから真っ直ぐいけば着くけど、このフライって人は知り合いなの?」

「あぁ、俺の幼馴染で俺をこのゲームに誘った本人だな」

「あら。それじゃあ、その人には感謝しないといけないわね。わたしが貴方と出会うきっかけになってくれたもの♪」

「頼むから遠慮してくれ……」


本当に言いかねない。て言うか、言われたらあいつにどんな揶揄われ方されるかわかったものじゃない。


それはそうと、ここから真っ直ぐか。なら簡単だな。行くか。


「名七、そっちは逆方向よ?大聖堂はこっち」

「………案内、よろしく頼む」

「ふふっ、本当に方向音痴なのね。安心して。貴方にはわたしがついてるから。ちゃんと目的地まで案内するわ♪こっちよ」


はい、舐めてました。一直線だから大丈夫だと舐めてました。恥ずい……。




–––––数分後




「ハイ、とうちゃ〜く。ここが大聖堂よ」


途中色々な店や建物の説明を受けながら辿り着いた教会。第一印象がこちら。

すっごく大きい教会ですね。以上。

どのくらい大きいかと言うと、サクラ○ファミリアくらいの大きさ。いやデカいな。


「なるほど、大聖堂って言うのも分かる。でもなんでこんな街に?王都とかじゃないのか?」

「それはね、ここがこの宗教の発祥の地だからよ。ここらか彼らの宗教『スティフィラ教』ができたの。いわば総本山ね」

「なるほどね。だからこんなにも大きいと。これアイツ見つけるの大変じゃないか?」

「んー………そうでも無さそうよ?ほら、あっち見てみて?」

「ん?」


シアが指差した方を見てみると、手持ちの看板に『有名なトッププレイヤー名七さんはこちらにお越し下さい フライより』と書かれた紙を貼り付けた変人がいる。変人ったら変人だ。断じて知り合いじゃない。


「あら、会わなくていいの?」

「違う。人違いだ。あんな変人の知り合いなんて居ない。変人の知り合いなんて居ない」

「でも、すごくこっちを見てるわよ?」

「シアが可愛いからだろ。移動中もよく見られてた」

「そう言ってくれるのは嬉しいわ♪でも、こっち指差してるわよ?」

「よし、逃げるぞ」

「どこに逃げるって?ん?名七さんよ?無視すんなよな?あ?あぁ?」


来ちゃったよ。肩掴まれちゃったよ。どーしよめちゃくちゃ不機嫌。なーんで?

とりあえずしらばっくれるか。

ワンチャンスに賭けよう。


「…………どちら様でしょうか?俺は名七と言うプレイヤーネームでは無いのですが?」

「おうおう?じゃあ頭の上の『名七』って出てるのはなんだよ?あん?」

「…………………はぁ、悪かった。悪かったよ。でもさ、お前もあんな事せんでも普通にメールでやりとりすりゃいいだろ?」

「一番手っ取り早くていいだろ?あとお前がいるのはもうSNSで話題になってるぜ?『あのプロゲーマー名七がインしてた!』ってな。でもな?なぁんで美少女とくっついているのか説明は?あぁ?説明は?」


…………なるほど。コイツがこんなに不機嫌なのはシアといるからか。

確かにシアはなんかずっと俺の腕に引っ付いてたからな。今もそうだし。

どうしよ。めっちゃめんどくさい。


「関係、ね………ふふっ」


あー、シアさん?何をなさるつもりで?

頼むからややこしくは………する気満々だね。

付き合い短くても分かるよ。すっごい綺麗な満面の笑み。なーんか悪寒が……。


「ねぇ、ちょっといいかしら?」

「どうしたんだいお嬢さん。僕と何かお話でも?向こうにカフェ見つけたからこんな奴放っといて僕と行かないかい?(精一杯のイケボ)」


イヤダ。こんなのと幼馴染なの?俺。


「あら、素敵なお誘いね。でもごめんなさい。わたしすでに彼と(ゲームの中で)一緒にいることになってるの♪ずっとね?」

「Nooooooooo!!!!」


注目集めてるからやめてくんない?めちゃくちゃ恥ずいのですが。てかそこ!スクショしてんじゃねぇ!!俺までうつるようにすんな!

シアのせいであらぬ誤解を招くのは……………考えない様にしよう。考えたく無い。


「なぁ、どっかのカフェとかに入って話さない?めちゃくちゃ注目集めてるからさ。場所変えよう、な?」

「あぁ、そうすっか。案内するわ。あとお前は僕の敵だ」

「……………」

「楽しみね♪名七」(すっと腕を抱きながら)

「オマエハテキダオマエハテキダオマエハテキダオマエハテキダオマエハテキダオマエハテキダオマエハテキダオマエハテキダオマエハテキダオマエハテキダ」

「もう勘弁してくれ………」

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