第4話 プレイヤー視点

『プレイヤー「名七」が参戦します』


その名を見て、俺は目を疑った。

誰かがいるのは分かってたし、ここの階層まで来れる奴なら逃走を測れると思っていた。


そう、逃げるつもりだった。


「リーダー」

「………あぁ」

「こりゃ、貴重だな」

「ですね」

「あの、皆さん?」


ずっと一緒にやって来た俺たち4人は武器を納め、距離をとる。彼の邪魔にならない様に。

それを見ていた新人が不安そうに尋ねてくる。


「あぁ、すまねぇな。だがお前さんも武器納めていいぞ。俺達がやる事はねぇ」

「え、でもあの人1人だと……」

「そう言えば、君はこのゲームが初めてでしたね。知らなくても仕方ないですか」

「まぁ、でも名前は聞いたことあるんじゃねぇか?」


世界ランキング3位。その肩書きはゲームをやってない人でも知っている名前だ。


「確かに見た事はありますけど……でも、ここは低い階層って言っても34階層ですよ?」

「俺達が行っても邪魔になるだけだ。それに、【修羅】の名七。その実力がこんなところで見れるとはな」

「ちゃんと見とけよ。あれが、世界に君臨する化物だ」


プレイヤーの1人がそう言った時、名七は大太刀を構える。居合抜刀の構え。

そのまま、一直線に突っ込む。


「Gaaaaaa!!!!」


モンスター達が吠え、名七に突っ込んで行き–––




>新人視点<




「ぇ?」


細切れになる。見えなかった。なにも。

抜刀した瞬間も、納刀した瞬間も。

ただ、斬ったと言う結果だけが残る。


「アイツは、攻撃力と速度を上げ続けた防御0の最速アタッカーだ。装備やスキルでも上げてるから目に見えなくなってる」

「そうやって、先手必勝って感じでここら辺の階層は無双し放題なんだわ、アイツ」


先輩方が説明してくれる。

けど、信じられなかった。

カウントが99になる。あれから4秒しか経ってないのに。


「ゲームの特性上、ボスは5秒間動かないし、こっちからも攻撃を与えられない。運営から回復しろって事だろうが、アイツにとってはむしろ強化時間だろうな」


リーダーの言葉通り、名七は大太刀を居合に構え、スキルの重ねがけをしている。

5秒が経過しようとしている。私達は見続ける。

彼が小さく、呟く。




【神域抜刀】




光が消える。世界が白と黒で染め上げられる。

音が消える。世界が彼を捉えられなくなる。

やがて、一筋の朱い光。

大太刀から漏れる、神域の炎。






神鳴カミナリ






見えた。とても綺麗な居合を。

見れた。人間離れした剣を。

あぁ。これが。

これが、化物の戦い。




>名七視点<



オーバーキルだったな。

あれから、RTAをやめて俺は颯爽とその場を去り、ログアウトした。

いやー、念の為とスキル重ねがけした後、神域の刀術使ったらオーバーキルだったわ。

ボスのHP(ヒットポイント)を超えたダメージ叩き込んだわ。やっべー。また運営からなんか言われそう…………。

寝るかな。明日考えよう。そうしよう。





–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


崩壊スターレイルっていうゲームって、オーバーキル量産できるんだぜ?

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