第16話 討伐隊参加要請

翌日、私達は、昨日の戦闘もあり、全休を考えたが、昨日、ギルドマスターに報告したオークの件が気になり、午後から冒険者ギルドへ行くことにした。

ギルドに到着すると、何やら騒がしい。

ギルド内にいる他の冒険者に声を掛ける。

「何かあったんですか。」


「今朝方、『勇者の集い』がボアの餌場へオークの調査に行ったらしい。

 先程、パーティメンバーと共に調査から帰ってきたんだが、前衛のアロンゾと魔法士のゲイツが重傷で帰ってきたんだ。

 リーダーのアロンゾと他のメンバーは軽傷で済んだらしいが、重症の二人が無茶をして戦闘になったらしいが、オークロードの存在が確認されたらしい。」


「そうなんですね。」


ステラ達は混乱してるギルド内を見まわし、しばらく様子を見るかと考え、ボルタ達に食堂でお茶でもしようと提案した。

ボルタ達もギルド内の緊張感を感じ、不安を拭えないようで、ステラの提案を素直に聞き、お茶をすることにした。


一方、ギルドマスター執務室では、ギルドマスターが頭を抱えていた。

「アインツ、調査だけで絶対攻撃するなと言ったよな。」


「申し訳ございません。

 私が先行して調査に行っていたのですが、まさか待機しているメンバーの後方から、オークに襲撃をされるとは思ってなく、已む無く戦闘となりました。

 アロンゾ、ゲイツ、カーツが懸命にマルコを護って、何とか逃げてきた状況でして。」


「と言うことは、こちらから攻撃したのではないんだな。

 それで、マルコを護っていたアロンゾとゲイツが重傷ということか。

 まずいな。」


「はい。

 とにかく組織的で不思議に思っていたら、オークロードが居ました。」


「今、この王都にはAランクパーティが不在だ。

 Bランクパーティもお前達だけだ。」

 

「上級ポーションありませんか。」


「現在、欠品している。」


「そんな~。」


「誰か、上級ポーションを持っていないか、確認してくれ。」


「承知しました。」

サブマスがギルド内に確認し行く。


サブマスが受付前にやってきた。

「誰か上級ポーションを持っていないか。」


「上級ポーション?」

「そんな高価なもん持ってる奴なんているわけねえよ。」

サブマスの声掛けに他の冒険者が文句を言っている。


「あのー」

ステラがサブマスに声を掛ける。


「何だい、お嬢ちゃん。」


「私持っています。」


「本当か?来てくれ。」

サブマスがステラの腕を掴んで慌ててギルドマスターの執務室へ連れていこうとする。


「痛いって、慌てないで、自分の足で行けるよ。」


「そうか、すまん。」


「ボルタ達も一緒に行こう。」


「いいのか。」


「同じパーティメンバーなら来てくれ。」


「わ、分かった。」

ボルタ達も戸惑いながら執務室へ向かうことになった。


執務室に到着するとノックをすることなくサブマスがドアを開ける。


「サブマス、どうだった?」


「この子が持ってると言ったので連れて来ました。」


「ん、お前はステラだったよな。

 見せてくれ。」


ステラは上級ポーションを3本取り出す。


「これで良いですか。」


「随分、高級な上級ポーションだな。

 これはどうやって手に入れた?」


「私はクビになりましたが、元聖王国の聖女候補です。

 聖王国で支給されたものです。」


「クビにされた時に回収されなかったのか。」


「突然、放り出されたので、枢機卿の頭になかったんじゃないですかね。

 今更、私を探そうとも思わないでしょうし、どうぞ使ってください。」


「そ、そうか。感謝する。

 2本購入する。金貨10枚で良いか。」


「相場を知りませんが、それでよいです。」


「金貨10枚だ。受け取ってくれ。」


「ありがとうございます。」


「これで、アロンゾとゲイツが助かる。」


「じゃあ、私達は行きますね。」


「ちょっと待ってくれ。

 ステラ、オークロードが出たんだ。

 Cランクのお前達には悪いんだが、討伐隊に参加してくれないか。

 今、王都にAランクパーティが不在で、Bランクも重傷を負った『勇者の集い』しかいない状況なんだ。

 このままだと、オークに王都が襲われる可能性もある。」


「どうする。ボルタ?」


「怖いけど、王都を護らないと、俺達の住処を護らなきゃ・・・受けるよ。」


「うん。わかった。ギルドマスター討伐隊に参加します。」


「すまんな。Cランクに昇格したばかりなのに。

 報酬は一人当たり金貨10枚だ。」


「はーい。」

「金貨10枚だってよ。」

「それだけ危険なんじゃ。」

「また、ステラが指揮してくれるんでしょ。」

「ステラ、大丈夫だよね。」


「はいはい。

 危険がない仕事はないよ。

 でも、きっと、大丈夫だよ。」

適当に返事をするステラだが、内心、何とかなるだろうと確信する。

 

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