第2話 ステラの素性

ミルト聖王国にいても仕事はない。

この国は女神クリスティア様の庇護のもと、クリスティア教を信仰する宗教国家だ。

お金儲けをする産業なんてない。

唯一あるのは、他国の人が礼拝するためにこの国へやってくるので、宿泊施設を営む宿泊業だけだ。

破綻してるな~。


そもそも私は孤児だった。

5歳の魔力量を量る選定式で、魔力量が多かったため、教会に連れていかれた。

元聖女が転生したのだから魔力量が多くて当然だ。

魔法の知識も膨大にある。

賢者ロトなんかより私の方が優れていたと思っている。

本当に記憶を取り戻す前に追い出されてよかった。

また、聖女をやるなんてぞっとする。

正直、教会は、教皇、枢機卿の権力争いばかりで、窮屈でつまらなかった。

自由と言えば、冒険者、ロマンを感じる。

ただ、この国には冒険者ギルドがない。

聖王国を出よう。

女神クリスティア様には申し訳ないけど、聖女サーシャは死んだのだ。

地球で亡くなり、この世界にスカウトされ、女神の使徒となっていたけど、転生した今の私はただのステラだ。

女神の使徒ではない。


さて、リルは何をしてるのかな。

きっと、寝てるわね。

私がお世話してあげないといつまでも寝てる子だったから、もしかしたら、10年くらい寝てるかもね。


「よし、ウンベラータ王国で冒険者登録し、お金を稼いでから、過去の私の故郷、ブルーム村に行ってみよう。」

あの子はきっと村の近くで寝ている筈だわ。

まずは、王都オンブルで冒険者登録をしましょう。

途中でボアやオークでも狩って、路銀を稼がないとご飯が食べられないわ。

今の私は育ち盛りの10歳の女の子だ。

食事は大事。

その前にステータスを確認しておこう。


「ステータス」


名前:ステラ 10歳

種族:人族

魔力:100,000/100,000

神力:100,000/100,000

魔法:風魔法、水魔法、無属性魔法、鑑定魔法、生活魔法、神聖魔法、転移魔法

称号:元聖女候補


よし、聖女じゃない。


次は、あの木の枝を魔法で切ってみよう。


「トモスアエラス」


風魔法で鋭利な刃物をイメージして木の枝に魔法を放つと、枝が切れた。

速度も威力も申し分ない。


10歳の子供でこの魔力は規格外だ。

このステータスは聖女サーシャの時のステータスだね。

ステータスを引き継げているということは、女神クリスティア様も今世は聖女にならないことを認めたという証明だ。

これはミルト聖王国の事を女神クリスティア様は相当嫌っているな。

あのタイミングで記憶を取り戻したこともワザとかもね。

「うふふふ・・・笑える。」


じゃあ行きましょうかね。ウンベラータ王国へ。

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