元聖女候補、聖王国に無能と認定されたので出国し自由を謳歌する ~邪魔する者は薙ぎ倒す~

蒲さし利休さん

第1話 覚醒

「このバカモン。聞いているのか。」


頭が痛い。

どうやら目の前にいるファイン枢機卿に殴られたらしい。


「ステラ、聞いているのか。

 魔力量が多いという理由で聖女候補として教会で期待して保護したが、期待外れにも程がある。

 3年経つが、未だ小さな傷程度しか治癒できないなんて、女神クリスティア様への信仰が足りていないのではないか。」


「枢機卿、申し訳ございません。」


「もうよい。お前はクビだ。この教会から出ていけ。無能に用はない。」


「そんな~、許してください。私には行くところがありません。」


「問答無用だ。来い。」


私は乱暴に腕を摑まれ、引き摺られながら、教会の裏口から放り投げられてしまう。


「止めてください、止めてください、きゃーーー」


『ゴン。』

私は出入り口の壁に頭を強く打ち付け、気絶してしまう。


「おい、お前、あいつを片付けておけ。

 門の外に放り投げたらきちんと門を閉じておけよ。」


枢機卿は門番にそう告げ立ち去って行った。


門番は止むを得ず、ステラを抱きかかえ、門の外へ運び出し、裏門から出た先にある木の根元にそっと横たわらせ、教会に踵を返す。

「君は運がいいかもよ。今の聖王国は腐っている。

 旧聖女様が亡くなられてから、10年経つが未だに新しい聖女が擁立できない。

聖女を育てる人がいないからね。

 各国の要請では聖女擬きを派遣しているが、法外な値段を請求している割に成果は芳しくない。女神クリスティア教の信用はダダ下がりだよ。」

門番は独り言ちた。



それから30分後ステラは目を覚ます。

「イタタタッ・・・。」


あれ、ここ何処だ。

いやここはよく知っている場所だ。

かつて私はこの教会に所属していた。

そしてアルリフラ帝国の要請で従魔のリルと勇者パーティの一員として、魔王討伐へ派遣され、命を落とした。

転生は成功したんだ。さすが私。


あっ聖女候補、クビになったんだ。ラッキー。

ちょうどいいや。転生してまた聖女なんてお断りだ。

何をしようかな。

取り合えず、ここから離れよう。

私はスキップをしながら、教会から離れるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る