誕生

そして――

その世界の空の下。細長い扶桑国と呼ばれているその島に連なる西に在る比較的大きな筑紫島と呼ばれている島の北側にある筑前地方五十川村の片隅で、一人の男の赤ん坊が産声を上げた瞬間黒雲が村を覆い、雷鳴が裂いた。

赤子は目がまだ見えないはずなのに灯っているランプの、炎を見みて怖がった。

――雷に祝福され、火を恐れる子。


まだ何者でもないその命は、自分がどの様な道を歩むことに成るのか知らずに、鳴き声を上げていた。

その日、村の空は、雲ひとつない晴天だった。しかし、村の南東の方に有る霊峰諸岡山から黒雲が湧き五十川村に流れ、村の全天を黒雲が覆い雷が鳴り始めた。赤子が誕生したその瞬間天にひときは大きな紫色の稲妻が駆けた。

そして、村のはずれ、小さな農家の土間に、赤子の産声が響きわたった。

「おぎゃああああああああああああ!!!」

それはまるで――地鳴り。

産婆のバアさんが腰を抜かしかけた。

「うぉっ……!? なんて泣き声じゃ……まるで、落雷の音の様じゃよ!」

産まれた赤子は、首が太く身体全体がどっしりと太く、骨格も太く、足の筋肉も生まれながらにして発達しており、足はしなやかで尋常なく太く

体重は尋常じゃない。産婆が測ったところ、普通の赤子の3倍を超えていた。

「こんな赤ん坊見たことない」

しかしそんな赤ん坊も一つだけ恐れる物があった火を異常に恐れ、蝋燭の火すら恐れた。

あなた、名前を付けてあげてとエリシアが、子供の父親である自分の主人レオナルドに言った。

「この子の名前は雷電だ。この子が生まれた時晴れていたのに突然黒雲が天を覆い雷が鳴り始めたからな。この子は雷と何か関係が有るのかもしれん」

貴方、私、この子を産む前に稲妻と共に子供を産む夢を何度も見たの。そしてこの子が生まれた時も雷が鳴っていたからこの子は雷に祝福された子だと思っていたのだから雷電という名前はこの子にぴったりだわ」と母のエリシアが言った。


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