第4話 アエル、地球へ

 アエルが「どうしよう、決められない」と独り言を言いながら、タブレット画面に表示された星の情報サイトの、絞り込み後でもまだたくさんあるの星のリストを見ていると、画面の右上に [お勧め] のボタンがあるのに気付いた。何事も自分で決めたいアエルは普段からお勧めを利用することなどなかったが、なぜかその時だけ意思に反してボタンを押してしまった。「あっ押しちゃた」と思った瞬間、目に飛びこんで来たのは青く輝く綺麗な星だった。アエルは思わず「綺麗!」と呟いた。その瞬間、行き先は決まった。人気ナンバー1というのがちよっと引っ掛けるアエルだったが、とにかく青く光り輝く星の全体像が強烈で心を動かされた。その日の夕食の時、母が観光に行く星を決めたかアエルに聞いてきた。アエルは黙って膝の上に置いておいたタブレットを食卓の上に移し、画面を開き青い星を見せた。母が「綺麗な星ね!」と言うと父が続いて「うん、悪くない」と言った。「じゃあ地球に決まりだね」とアエルが嬉しそうに言うと、父も嬉しそうに「その星、地球って言うんだ。ハイパービークルのレンタルの予約を入れないとな」と言った。そしてアエルにタブレットの情報を自分のタブレットに送らせると予約を始めた。始めると直ぐに「原始的な暮らしに帰ったカズー人が移住した星が結構有るって聞いたけど地球は割と文明が進んでいるんだな、ワープ機能だけじゃ駄目みたいだ。ダウンサイズ機能も付けないと」と異文化観光免許を取得している父らしく、高等生物が住んでいる星ではその生物に見つからないように乗員ごとビークルを極小サイズ化出来るダウンサイズ機能付きである必要性を呟いた。そうしないとカズー星統治協議会の許可が下りないからだった。そしてその他、統治協議会への地球への家族観光旅行申請や、その星の環境を壊さない誓約書等の手続きを父が行い、後は旅立ちの日を待つだけになった。見た目が気にいって行きたくなっただけの星なのに、なぜかわくわくして落ち着かないアエルを妹のアズーがからかった。そんな妹をよそにアエルは地球という星の情報を少しづつを頭に入れていった。すると常に温暖なカズー星にはない、四季という自然の変化が繰り返される地域が地球の一部にあることを知った。春、夏、秋、冬が毎年繰り返され、今は春が始まったばかりの時期でこれから桜という花が咲きほこるとのことだった。「桜ってどんな花だろう。気になる、絶対、桜を見る!」そう心に誓うアエルだった。更に地球人の外見の情報として、カズー星と異なる厳しい環境にもかかわらずその影響は小さく、住む場所の環境により肌の色や顔の造作に多少の変化が出来、地球人が人種と呼ぶ違いが出来たが、基本的な体の構造に変化は無く、違う人種間の二世などもおり、カズー星人と見分けがつかないということだった。「地球人に恋したらどうしよう。あり得ないか…」と心がざわつくアエルだった。そんな日々を一週間過ごし、地球への旅立ちの日がきた。

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