第3話 惑星カズーの今…

 惑星カズーで実施されていた新天地移住政策は、空間利用技術の革新的な進歩で人口の調整が必要無くなったため、開始後30年ほどで終了していた。そしてその時、カズー星統治協議会はカズー星人全員を対象に、精神面の幸福度と生活の満足度を調査するアンケートを実施した。結果が高評価であったため、全ての機器が声で操作出来る現在のシステムを維持し、別の新技術を取り入れることでの戸惑いや習熟のための時間の浪費、家族の団らんが失われる可能性がある全ての娯楽や競技や新システムにおいて、今の生活を維持出来なくなると思われる全ての新技術や新しい生活スタイルの取り入れを禁止した。しかしそれら以外の、特に未知の生命体からの惑星カズーの防衛、生活や心を豊かにする科学技術の研究は推奨された。そんな中、特に多くの技術研究所が参入し競い合ったワープ技術の開発がついに成果を結び、ワープ機能をもったファミリー向け超小型宇宙船、通称ハイパービークルが開発製造された。そしてカズー星統治協議会による、惑星カズーから他の星への移住者達が住む星の特定が一部を除き完了したため、カズー星統治協議会が発行する異文化観光免許を取得することで、それらの星へ旅行することが可能になっていた。遥か遠くの星を短い日数で観光出来るのが受け、アエルの父も免許を取得し今日も家族を説得し続けていた。「だってハイパービークルって凄い高いんでしょ。そんな貯えないから無理よ、買えません」と言う妻にアエルの父は買いたい気持ちを抑え「新車はあきらめるから今回だけレンタルで」とお願いしていた。「レンタル…、ならいいか。アエルはどうする?一緒に行くでしょ」と言う母に、アエルはそれほど乗り気では無かったが父の「頼む!」の目に同情し「うん行く」と答えた。不思議なことに行くと決めると、かつてこの惑星カズーから旅立ち、遠い星で何も無い状態から開拓し文明を築き上げ、今も住み続けている遥か遠い先代の暮らしにどんどん興味が湧いてくるアエルだった。そんな時、父と母が「観光に行く星はアエルが決めていいよ」と言った。アエルは昂ぶる気持ちでパーソナルマルチタブレットを使い、先人が住む幾多の星の情報サイトを開いた。驚くほどその数は多かった。「本当に宇宙って広大なんだなあ」改めてそう感じるアエルであった。アエルとして絶対はずせない「水が多く綺麗な星」というキーワードで絞り込んでも残る星の数は多くなかなか決められなかった。

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