第22話 準決勝終了。そして決勝へ
そうしてドーリスは自信満々に自分のことを語り出した。
「俺の天職は重騎士。攻撃力と防御力に特化した天職だ。そんじゃそこらの甘ったれた、まあお前の使うような攻撃なんて痛くも痒くもねえワケだ」
(なるほど。こいつはサイコブレイクをくらっても大丈夫な防御力の持ち主のほうか。だったら殴り続けてやればこいつはそのうちダウンする。弾かれる、無効化されるんじゃなくて高い防御力で受け切っているだけだからな)
トレサの時はスキルによって生み出されたオーラによってスキルも、剣も無効化されていた。つまり、1ダメージも与えられていなかったってこと。0ダメージで何度攻撃しても与えられるのは0ダメージだ。
それに対してドーリスの場合は100程度のダメージを高い防御力で1にしているようなもの。どれだけ高い防御力であろうとダメージを0にすることはできないわけで、であれば1ダメージで100回攻撃すれば100ダメージを与えられるのだ。
(それにドーリスは攻撃、防御特化らしい。だったら多分他のステータスは低いはずだ。攻撃、防御、スピードも全部高水準だったトレサと比べたらずっと楽な相手だ)
そうして俺はその男の攻撃を避けて殴る、避けて殴るを繰り返して戦闘を進める。
そして数分たった後、俺にはほとんどそいつの攻撃が当たらず、反対に俺の攻撃は一方的に当たり続けていた。
そんなドーリスは戦闘前の彼の言葉とは裏腹に、彼自身がボロボロになっていた。
「ち、ちくしょう……なんで俺の攻撃が当たらねえ!」
「……ははっ。お前が天職を教えてくれたおかげだよ。いや、それだけじゃあないな。お前が天職の名前どころか、攻撃、防御特化ってところまで全部喋ってくれたからな。こうやって、ひたすらに回避を繰り返すって感じで戦うって方向性を固めることができた。」
「なっ……! ちッ……クッ、クソがあァァ! ぐっ、それにオマエはなんでそんなにちょこちょこと逃げ回って疲れてねえんだ!」
ドーリスは声を荒げて俺に問う。
「俺は子供の頃から鍛えられてたんだ。体力はあるつもりだ。ああ、それと……お前の剣は単調だった。まるで使い手の頭の出来を表すように」
「な、なんだとォッ!!?」
「ようするに、簡単に躱せるんだよ。お前と違って、ここを使うことができればな」
そう言って俺は笑みを浮かべながら自身の頭を指差す。
「く、クソッ! クソッオ! クソがァア゛ア!!」
そうして地団駄を踏むそいつの顔は真っ赤に染まっていた。
(はあ、煽り耐性のないヤツを煽りすぎるとちょっと面倒だ)
そう感じた俺はドーリスに言葉をかけ、降参を促す。
「とにかく、お前はもう限界だろ。俺も限界のやつをさらに殴ったりはしたくないからな。とっとと俺に勝ちを譲ってくれ」
「譲ってたまるかあッ!オマエみたいなガキよぉッ!!」
「そうか。しかたない。じゃあ早急に終わらせるとしよう! サイコクラッシュ!」
そうしてそいつの足元にピンク色の円が浮かび上がる。直後、ボロボロのそいつは避けることができずに爆発にのまれ、煙が晴れて見えたそいつの姿は地に横たわっていたのだった。
「これならトレサの方が何段階も強かったな」
そう言って俺は準決勝に勝利し、その場を後にしたのだった。
「お疲れ様です。貴方なら勝利すると思っていました。見上智也さん」
「……あなたは」
会場から離れた俺に声をかけたその男は、トレサ・ダントカーである。
「傷は……大丈夫ですか?」
俺は自身が彼に与えた傷の状況を聞く。
「はい。治療係の方のスキルでもう全快です。見上智也さんの方は大丈夫でしょうか」
「俺もその治療係のおかげでもう。ああ……それと、敬語なんて使わなくても大丈夫ですよ。俺のことは智也とか、そんな感じで気軽に呼んでください」
あまり敬語を使われるのに慣れていない俺は彼にそう要求した。
「分かりました。それでは智也さん、と。敬語の方は……すみません。私は生まれてから5年の間、ほとんどを敬語で過ごしてしまして。これに慣れてしまっているのです。よろしければこのままで話させていただけないでしょうか」
「はい。そういうことなら全然大丈夫です」
(へえ、生まれてからのほとんどを敬語……そんな人もいるんだなあ。それに5年間ってことは、同い年なのか。まあそんな感じはあったが)
俺はそう考えながら彼に答えた。
「それと、智也さんの方は全然敬語でなくて大丈夫ですよ。私のことはトレサとでも呼んでください」
「わかった。それじゃあそうさせてもらうよ。トレサ」
彼の提案を俺は二つ返事で受け入れた。そして俺はそんな彼にふと気になったことを聞く。
「そういえばトレサはなんでここに?」
「ああ、それはただ……好敵手の勝利を祝おうと思いまして」
「へ……? それだけ?」
俺は彼から返ってきた答えが思ってたものと大きく違っていたため、そんな反応をしてしまう。
(てっきり、何かもっと大層な用事があるのかと思っていたんだけど……)
「はい、それだけです。私の家では、一度戦闘を行った善人は友人。まあ、一方的にそう捉えてるだけですけど。友人の勝利は祝うものですから」
「……なるほど。それじゃあ俺もトレサのことは友人と思ってもいいかな」
彼の言葉をきいた俺はそんなことを要求する。
「はい! ぜひよろしくお願いします!」
「ありがとう。トレサが俺を友人と思ってくれるなら、トレサのことを友人として思いたいからさ」
そう俺が言った時の彼の表情は心なしか笑顔に見えた。
「それじゃあ俺はようやく決勝みたいだからさ。行くよ」
「分かりました。貴方の実力ならきっと決勝も勝利できるでしょう。頑張ってください」
「ああ。行ってくる」
そうして俺は決勝の地に足を運ぶのだった。
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