第18話 2回戦開始
(ふう……結構マジで疲れたなあ)
その試合に勝利した俺は膨大な疲労感と共にその場を後にする。
「お、おいおい……! エスパーが、あのエスパーが魔法使いに勝っちまったぜ!?」
「エスパーの坊主は剣を使っていたが、普通エスパーのステータスであそこまで身体を動かせるもんなのかよ!?」
途中そんな声が観客席から聞こえてくるが、今の疲れ切った俺には届かなかった。
そうして誘導され、控え室のような場所で腰掛けていた俺は支給された回復薬を使って疲労した肉体を回復していた。
「次の対戦相手は誰になるんだろうか。次の対戦相手は7番の人か8番の人の、どちらか勝ったほうだったよな」
しかしこのイベントは平等のためなのかなんなのかは知らんが、選手は試合の観戦はできないみたいで、相手の情報を知ることはできない。
「うん、どうしようもないな。とりあえずのんびりと2回戦を待つとしようか」
そして長い間待ち、全ての1回戦が終わってようやく次の相手が7番か8番のどちらかが確定した。
「7番の人か。まあまだ相手の詳細は判明してないわけで、どうしようもないからな。もう一度のんびりと待つとしよう」
そして待つこと数十分。俺の番が来て、先ほどのように闘技場へ向かう。
「アナタが俺の相手……。自分、トレサ・ダントカーと申します。お願いします!」
正面に現れた俺と同じくらいの少年が足を止めてすぐにそう名乗り、礼をする。
(おお、随分と礼儀のいい……こりゃ俺も同じようにしないと失礼だな)
「見上智也です。お願いします」
俺もお辞儀と名乗りで返すことにした。
直後、「試合開始!!」という声が響く。
(とりあえず相手の天職がどんなものかを探っていこう)
「ねんりき!」
トレサのスキルを誘発するためのそのスキルを俺は放つ。
瞬間、彼は拳を前に突き出した。その拳は青い光を纏い、直後に光は拳から射出? されて俺のねんりきと相殺した。
(拳から光弾を……! 少なくとも魔法使いの類ではなさそうだ。そのうえ剣士とかでもないだろう。拳……拳を扱う天職というと……)
「やああああ!」
「おっと……!」
俺が思考しているとそんな声が聞こえてくる。声の方向に視線を移すとそちらにはトレサが拳を振りかぶりながらこちらへ走ってきていた。
「ねんりき!」
俺はそれに向かってねんりきを放つ。
「やあっ!!」
しかし、パァン! と音を立ててその波は青白く光るその拳に相殺されてしまった。
(なるほどな。拳に青白い力を纏って戦う天職。俺の知識の中で最も近しいのだと『拳闘士』だな)
拳闘士。それは自身の身体能力を大幅に強化して肉弾戦を行う天職だ。一部、遠距離攻撃ができるスキルもあると聞いていたが、それはあの光を飛ばすヤツだろう。
(ともかく、そう言った相手であればひたすら距離をとっての戦闘が効果的だな。ねんりきも相殺されるとはいえ、少しの間動きを止めることができているわけだし)
そうして俺はひょいひょいと後方に下がりながら、使用可能となったねんりきをもう一度放つ。
彼は先ほどのようにそれを拳で相殺しようとする。
(相殺。ダメージを受けることはないしなかなか便利な手段だが、隙を作っちゃあダメだよな!)
そして俺は、彼がねんりきを相殺するときに動きが止まるのを利用する。
「サイコクラッシュ!」
やつの拳と俺のねんりきが衝突するであろう場所を予測し、俺はそこにサイコクラッシュを発動する。
全力で走っていたそいつはそう簡単に歩みを止められずにねんりきを拳で迎え打つことになり、そしてやつの動きは止まってしまいサイコクラッシュの爆発にのみこまれることとなった。
「くっ……全身防御っ!!」
チュドーンッ! と音を立てた爆発と共に生まれた煙に彼の体は隠される。
(確かに爆発を受けてはいるみたいだが……使ったな、スキルを。となるとどれほどのダメージとなっているか……)
煙が晴れて人の影が見える。それはどうやら二本の脚でしっかりと大地を踏み締めていて、これではまだ勝利にはなりそうにない。
「危なかった」
どうやら危なかったらしい。
「ねんりき!」
(悪いね。トレサ君のような天職のヤツは近づけさせてはいけないって、そう決まってるんだ)
そんな考えで俺は彼にその桃色の波を送る。
「ぐぅっ……!」
(まあ最悪近づかれても剣で戦えばいいけど)
とはいえ、それでも遠距離の方が有利に戦える。ゆえ、俺はバックステップで距離をとりつつねんりきをうち続ける。たまに青い光がビュンと飛んでくるが、一直線で単調なため見てからの回避が可能だ。
長い間そんな戦闘を続けたころ、ついにトレサが動きを変えた。
「さすが、一回戦を勝ち抜いた方です」
彼は突然そんなことを口にした。
「それは君も同じでしょう? お互いに一回戦を勝ち抜いたからこそここにいるわけですから」
「そうですね。お互いに一回戦を勝ち抜いた。一回戦に勝利した貴方に温存をして勝てるわけがなかったんです」
(へえ、まだ何か残してるわけか。それにこんな言い方、この状況を打開できるモノを残しているように見えるな)
そう考えた俺は何が来てもいいように構える。直後、彼の身体は先ほどまでの光に全身が包まれたのだった。
「全身武装ッ!!」
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