第17話 意識外からの攻撃

 距離を詰めても離されてしまうのか。じゃあ遠距離で……って言ってもねんりきはファイアボールなどに威力で負け、かき消されてしまう。

 もし距離を離されずにカイラに剣を当てることができるとなるとやはり『自己暗示』だろうが、彼女の手数と対応力の前では自己暗示によるスピードアップさえも対処されてしまうかもしれない。

 「何、ぼうっとかたまっているの?」

 そんなカイラの言葉と同時に彼女の手にプラズマが現れる。

 俺は瞬時に立ち上がり、サンダーを避けられるよう構える。

 「どうせ構えたって無駄なのに……サンダー!」

 「くっ……いちいち鼻につく言い方をする……な!」

 俺は向かってきたその雷をうまく回避する。が、その頃には彼女の手の中に炎が生まれている。

 「ファイアーボール」

 俺にはサンダーを回避したことでわずかに隙が生まれていた。なんとか回避を試みるがその炎は俺の肩に触れた。

 「ぐ、ああ!」

 それを受けた俺は地面に膝をついてしまう。

 (ぐっ……、くそ。やっぱり俺には手数が足りない。アイツとやり合うための手数が)

 俺があいつにねんりきを打ち込んでもファイアボールでかき消されてしまう。そして俺はあいつのサンダーへの対抗策がない。サンダーを撃たれて仕舞えばなんとか回避したとて、その隙をつかれてファイアボールにやられてしまう。

 自己暗示は使えるようになったが、距離を詰めてもあのウィンドで離される。それじゃあ意味がない。

 自己暗示でねんりきの威力をあげてしまえばいいんじゃないか? いや、それでもあいつを倒すには手数が足りないだろう。

 俺には使いやすい遠距離攻撃がねんりきしかないが、あいつにはサンダーとファイアボールの2つ。いくらねんりきの威力が上がったとしても手数の差を埋めることはできないだろう。

 (ちくしょう。どうしても手数が足りない。遠距離戦闘では手数が足りず、近距離戦闘をしようとすれば吹き飛ばされるか、凍らされる。

 どうすれば……いや、待て。今、俺に遠距離攻撃が、手数が不足しているのならそれを作ればいい! 俺には剣があるじゃないか! 剣というものは近づいて、敵を斬ること以外にも使い方はあるじゃない。そうだ、剣をぶん投げてしまえばいい!)


 そうして俺は自己暗示で自身の力を上げる。その剣がヤツに届くように。

 その剣にサイコエンチャントを使う。その剣が敵を穿てるように。


 「へえ、まだ私に勝てると思ってるんだ。確かにアナタはよくやっているわ。その天職でここまで私の攻撃に耐えれているもの。けれど結局、今アナタができているのは耐えることだけ」

 「あ、ぁ……確かにそうだな。けどさ、俺はお前に負けたくねぇんだ」

 「そうみたいね。きっと、それくらいの意思がなければこの差に抗おうとしないもの」

 俺は再度立ち上がり、カイラの方へグッと踏み込み、スキルを放つ。

 「ねんりきっ!!」

 「無駄よ……ファイアボール!」

 そのねんりきはファイアボールでかき消され、そしてヤツの手のひらにプラズマが走る。

 (ッ、来る!!)

 サンダーを使用した。

その瞬間、全力で跳躍し、上からその剣をヤツめがけてぶん投げた。

 俺の剣は風を切り、ギュンギュンと回転しながらカイラの方へ向かって突き進んでいく。

 「なっ!? 剣を投げっ……」

 そんな声が目の前の彼女はから聞こえた。

 俺の剣は完全にカイラの意識外からの攻撃であった。故にそいつの回避行動は間に合わない。

 ただ、もし剣が刺さって殺してしまったら失格だ。だから俺はそのスキルを放つ。

 「パワー爆発!」

 その剣がヤツの目の前まで来た瞬間に、俺はそのスキルを放った。剣が纏ったサイコパワーが爆発し、そいつを吹き飛ばす。カイラの体は宙を数秒ほど舞い、そしてその体は地に落ちた。

 「終わりだ! ねんりき!」

 ここから起き上がられても困るからな。死なない程度の追撃を俺は放ち、さらについでに剣の持ち手で彼女の腹をグッと殴打する。

 「ぐ、ゔぇあ……」

 彼女はそのまま痰を軽く吐き、目を閉じる。

 

 そうして10秒がたち、その間そいつが起き上がることはなかった。

 つまり、第1回戦は俺の勝利で終わったのだ。

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