第15話 予選終了!
「後4人か」
魔法使いを倒して、そのまま残りも敵も倒しに行こうと思ったが、自己暗示が切れてしまっていた。
とりあえず俺は敵3人の足元にサイコクラッシュを放ち、相手の意識をそれに向けて一度距離を取る。そして、俺はのこりの相手の分析を始める。
(残りは……剣士っぽいのが3人と、見た目からは天職が予想できないのが1人。気をつけるべきはそいつだな。あいつはつねに後方に陣取っている。そして何か攻撃をしてくる様子はない。となると……)
そのように俺が分析していると、目の前に2人の剣士が走ってくる。俺はそいつらに対してねんりきを放つが簡単に避けられてしまった。
そしてそいつらは俺に剣を振るう。そんな左右から迫り来る素早い剣を俺は身をかがめて避ける。
しかし俺の目にはもう1本の剣が迫っていた。どうやら残りの1人が俺が2人の剣士に気を取られているうちに接近していたらしい。俺はその真っ直ぐ迫り来る剣による突きを、こちらも剣を抜きその突きが俺に当たる前に、すばやく剣を振ってその剣士の足元にこちらの剣を当てる。
「ぐああっ!!」
それによって剣士の動きが止まり、その突きが俺に届くことはなくなった。
そのまま俺は足を負傷したその剣士に再度剣を振るう。直後、その剣士は地面に倒れ込んで剣を手から落とすのだった。
そして俺は再び使えるようになった自己暗示で自身のスピードを向上させ、倒した剣士の方向へ走り、そしてそいつの足元にあった小石にサイコエンチャントを使う。
そんなことをしてる間に、2人の剣士はこちらへ向かってきて、俺に向けてそのスキルを放つ。
「高速切り!」
本来ならばそのスキルを俺はモロに受けてしまっていたくらいには早い斬撃だった。が、自己暗示でスピードをあげていた俺はその斬撃が届く前にそいつらとは反対の方向へ後転をして離れ、そしてそのスキルを放つ。
「パワー爆発!」
そのスキルは奴らの足元にあった俺がサイコパワーを付与した石ころのサイコパワーを爆発させた。
「ぐうっ!」
「ぎゃあ!」
そのまま俺は片方の剣士にねんりきを放つ。
「ぐおうっ……!!」
それによって怯んだ剣士を勢いよく俺は剣で斬り倒した。
直後、俺は身体を反転させながら蹴りをもう一体の剣士に放つがそれは受け止められる。
瞬時にその脚を引いて剣を構える。
「なかなかやるみたいだな……少年」
剣士はそんな俺にそう語りかけてくる。そんな剣士の言葉に俺は軽く適当に返す。
「そちらも相当の実力者のようですね」
「や、俺の力は半分ズルみたいなもんだ。そう言わんといてくれや」
剣士はそう言って口を閉じ、一歩踏み出した。
「ソニックスラッシュ!」
瞬間、剣士は超スピードでこちらへ飛び出し、俺に剣撃を放つ。
「ぐっ!」
(はやっ……!)
咄嗟に俺は剣でそれを防御しようとするが、間に合わずモロにそれを受けてしまった。
とっくに自己暗示の効果は切れていてそのスピードに俺の身体は追いつかなかったのだ。
(やっぱり剣同士のバトルでスキルがないってのはなかなか辛いな。とはいえこっちは長いこと訓練してたんだ。スキルの差くらい埋めてやるさ)
そして俺は集中する。
(この剣士、スキルを見る感じただの剣士じゃなくてスピードを重視したタイプの剣士みたいだな。そうなると有効な攻撃は……先読みの、いわゆる“置き”の攻撃か)
スピードのある相手と戦う時、攻撃を見てから対策したんじゃ遅い。よって相手の攻撃を予測し、先に剣を置く。そんな攻撃で対処するのが有効だ。それは、俺よりも圧倒的に速い父との戦闘で学んだものであった。
よって戦いの中で俺はあえて隙を見せる。それは相手の攻撃を誘発するため。
見事にそれに誘われて飛び込んできた男は、すでに振られていた俺の剣に斬られたのだった。
(ふう。残りは天職がわからないあいつだけか)
――――――
後方からそいつの戦闘を見ていた俺は今、絶望していた。目の前の、その男を囲んでいた4人は男にあっという間に倒されてしまった。
俺の天職は支援者。文字通り対象の人間を支援することができる。やつを囲んでいた4人は皆レベル20だったのだが、俺のスキルによって実際はレベル35ほどのステータスとなっていた。
そんなやつらを1人で圧倒? 冗談じゃない。
このイベントに出られる最大のレベルは30。エントリーの時に冒険者カードを見せてレベルを確認されるため不正はありえない。いくらレベル30とはいえ35相当のやつ4体を1人で相手できるだなんて。一体どんな天職なんだよ。
そんなことを思いながら俺は近づいてくる目の前のそいつに何も抵抗できずに切られ、そして意識を落とすのだった。
――――――
「結局あいつの天職は何だったんだろう」
俺は最後の1人のことについて考えていた。
他4人を倒した後、そいつは俺が近づいても何の抵抗もしなかった。
一応できなかった可能性もあるか。
まあこれ以上考えても仕方ない。
そう結論づけた俺は周囲を見回す。
「だいぶ減ったなあ。もうすでに残り人数が最初の半分以下くらいになってる」
最初にいた人達の半分くらいはすでに地に倒れていた。そんなことを考えたりしながら俺はこちらに向かってくる人達を何人も倒していた。
そして、闘技場に「終了!」という声が響き、闘技場にいた人の動きはピタリと止まった。
「ようやく終わったかあ」
最初は数えられないほどいた参加者が両手で数えられる量まで減っていた。
倒れていた敗退者は皆スタッフ的な人達に担がれてどこかに運ばれていき、そして残った俺たちは闘技場からギルドへと誘導されてた。
それにどうやら今から本戦の組み合わせを決めるのだが、決めてから本戦までには1時間の猶予があるそうだ。
そして今、俺はその組み合わせを決めるために冒険者カードを差し出していた。俺の冒険者カードを手に取ったお姉さんは俺が冒険者登録した時と同じ人でなんだか懐かしい気分になった。
(まだ登録してから2週間くらいしかたっていないが俺も結構強くなったな。これもリコからもらった魔石のおかげだな。あれがなけりゃあこんなハイスピードでレベルを上げられなかっただろうさ)
そうしてお姉さんは登録した時に使ったような台座を取り出してそこに俺の冒険者カードが置かれる。直後俺の冒険者は光に包まれ、光が消えた頃には俺の冒険者カードに5という文字が刻まれていた。そして目の前のお姉さんが口を開く。
「あなたの番号は5番ですね。それでは1時間後の本戦まで自由にお過ごしください!」
俺はその場を離れ、ギルドで昼メシを食べようとしていた。ちなみに例の席で。
なんだかんだであの席は俺のお気に入りとなっていたのだ。
俺は準備していた今日の昼メシを取り出す。取り出したのは黄緑色の半円にいくつかのラインが入ったパン、メロンパンだった。俺はメロンパンを口に運び、一口食べる。甘い。そのうえ外はサクサク中はふわふわだ。
このパンの甘さはくどくならない甘さでそこそこ大きなサイズのこのメロンパンでも、飽きずにどんどん食べることができる。
「最高だ。ごちそうさまでした」
そうして俺はその席を立ちあがるのだった。
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