第11話 報酬と錬金術

 そうして俺たちは山をとくになんの問題もなく降りていき、街へと戻っていた。

 「で、リコの家ってのはどの辺にあるんだ?」

 そう俺が聞くと、リコはぶっきらぼうに答える。

 「街の中だよ。どうせすぐに着くんだからおとなしくついてきて」

 その言葉を聞いた俺は言う通り大人しく彼女についてゆく。

 

 そうして確かにすぐに、リコは足を止めた。その前には白い壁に黒い屋根の、白黒の建物があった。おそらくそこがリコの家なのだろう。そう思った俺は彼女に問う。

 「ここがリコの家ってことであってるか?」

 「そう。だから入って」

 そう言ったリコが扉を開けて家の中へ入る。俺はその後を追うようにして家の中へ入った。

 「おじゃまします」

 その家はだいぶ散らかっていた。おそらくモンスターの素材などだろう。ゴブリンの腕っぽいものとかそんな感じのがゴロゴロと転がっている。

 正直いって気持ち悪いが我慢しよう。


 転がっているたくさんの物を踏まないように歩きながら奥へ向かう。そして1つの机の前で立ち止まる。

 その机の上にはブタの形の貯金箱が置かれていた。リコはブタさんの中から金貨を取り出して枚数を数えるような動作を行うと、どこからともなく取り出した袋に金貨を入れた。

 「はい、これのなかに30000ゴールドは入ってるから。今日はありがとう」

 そうして俺は30000ゴールドという夢と希望が詰まった袋を受けとる。

 「それじゃあ私はさっそくこのタマゴを使って錬金術を始めようかな」

 リコはそんな言葉を呟く。その言葉はどこか普段よりもトーンが高いように思えた。

 (そういえば俺って錬金術とか見たことないよな。せっかくの機会だ。見学させてもらおう)

 もちろんリコに許可を取らねばならないので、俺はリコに聞いてみる。

 「あのさ、俺錬金術とか見たことないからどんなふうにするか見学してもいいか?」

 するとリコは表情を変えることなく答える。

 「別にいいよ。あなたにはこの前助けて貰った恩があるし」

 (やったぜ)

 

 そうして俺はトコトコと歩くリコについていく。先ほどのモンスターの素材などが転がってる場所にやってきた。リコはその部屋の中央にあるツボのような物の前にちょこんと座り込むと、そのツボに先ほどとってきたタマゴや、よくわからない草や、モンスター(多分)の素材をぶち込み始める。そうしてあらゆる素材を入れ終わるとリコはおそらくスキルを発動する。

 「錬金!」

 その言葉が発せられた瞬間あたりは光に包まれる。2秒くらいたち目をあけると、ツボの中には1つの宝石のようなものが転がっていた。


 「なんだこれ」

 そんな言葉を俺が発すると宝石のような物をツボの中から取り出していたリコが答える。

 「これが錬金術で作れるモノのうちの1つ。この宝石はなんらかの効果を持っていて、世間では魔石と呼ばれてるらしい」

 魔石。どっかで聞いたことがある気がする。そして俺は説明を聞き終えて1つの質問をする。

 「それで、この魔石にはいったいどんな効果があるんだ?」

 「魔石の効果は鑑定スキルを使わないとわからないからちょっと待ってて」

 そんなことを言いながらリコはその魔石を地面に置き、スキルを発動する。

 「鑑定!」

 その直後、魔石の上に文字が浮かぶ。  「何々?経験値獲得量2倍?」

 経験値とはレベルアップに必要なものでモンスターを倒すことで一定の量が貰える。それが2倍? ただのチートじゃないか。俺がその効果に驚いてるとリコが口を開く。

 「この魔石、いる?私レベル上げる方法ほとんどないから使わないし。この前のお礼ってことで」

 俺はそんな言葉を聞くと思わず驚いてしまう。

 「いいのか?」

俺がそんな感じで聞いてみるとリコはうんと答えた。

 「だったらお言葉に甘えていただこう。ありがとう!」

今日はとてもいい日だ。30000ゴールドに加えて獲得経験値2倍の魔石が手に入るだなんて。

 「おじゃましました」

そうして俺はリコの家を後にするのだった。

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