プレゼント - 5

 さて、最後は僕の番だ。

 僕は一人で棚を見物していた。

 他の二人は、別の棚を見て回っている。天夏ちゃんが僕が一人でじっくり考えられるようにと気を遣って、春ちゃんを連れ立って行動している。

 おかげで僕は深く考え込むことが出来た。


 ただ、咲良ちゃんへのプレゼントは思い浮かばない。

 一体何が良いんだろう。

 他二人はしっかりと考えを示した。

 天夏ちゃんは自分の感覚を信じて、ぬいぐるみを選んだ。

 春ちゃんはこれからの季節を考えて、入浴剤にした。

 残念ながら、僕には天夏ちゃんのような決め方が出来る自信は無い。僕自身の感覚に頼って、いいプレゼントが出来るとは思えない。

 対して、春ちゃんの季節を踏まえたチョイスは納得できた。僕もその方向性で行こうかな。

防寒や、温まることのできる何かをプレゼントにする。

 ただ、これらのグッズは冬限定の物だからそれだけでは絞れない。せいぜい、ぬいぐるみとトートバッグを候補から外せるくらいだ。

 冬に丁度いいグッズとして残るのは、ブランケットに、マフラー。春ちゃんとは被るけど入浴剤。温かい飲み物で暖を取ることを考えたら、マグカップ。

 さらに候補を絞るための根拠が欲しい。


 咲良ちゃんとの思い出で、何かヒントは無いか。

 寒さ、咲良ちゃんと来て思い浮かぶ思い出は、咲良ちゃんが風邪を引いていた秋のことだ。雨続きで冷え込んで、そのせいで体調を崩した咲良ちゃんが早退した出来事。

 思えば、あの時のことがあって冬美さんと知り合い、兄さんとの仲は改善した。

 そうだ。咲良ちゃんのおかげで、僕たち兄弟は修復に向かったんだ。咲良ちゃんに気付かされたこと、してもらったことは大きい。

 それを思うと、さっきまでの自分が恥ずかしく思えた。

 自信が無いなんて言ってられないんだ。プレゼントを通して、咲良ちゃんへの感謝を伝えたい。

 不安は忘れて、僕はいっそう咲良ちゃんとの思い出について考えを巡らせる。


 咲良ちゃんの体調が悪化したあの時。

 厚着をした咲良ちゃんの姿が目に浮かぶ。傍らには荷物を持っている冬美さん。使い馴染んだマフラーを外す咲良ちゃんに、冬美さんが使い古された手提げバッグを手渡す。そんな様子が今でも印象的だ。

 ふと思い返してみれば、咲良ちゃんの持ち物には年季が入ったようなものが多かった気がする。ランドセルや教科書は別にして、マフラーしかりバッグしかり新品と呼べるようなものは少なかった。

 それに対して、冬美さんの持ち物には新品らしいものもあったように思える。そのせいもあって、初めて会った時に、冬美さんの姿が際立って見えたのを覚えている。


 どうしてお姉さんは新品を持っているのに、妹の咲良ちゃんは古びたような物を使っていたのか。


 考えてみればすぐに思いついた。

 冬美さんと咲良ちゃんの持ち物の違い、その理由は僕にも覚えがあることだった。

 だとすれば、候補は一気にひとつに絞ることが出来る。

 ただ、最後の最後に不安が過る。

 僕が選んだ物は、咲良ちゃんへのプレゼントとして相応しくないかもしれない。

 一度考え始めると、もくもくと不安が大きくなっていった。

 だけど、ついさっき僕は、咲良ちゃんに感謝を伝えたいと決めたんだ。

 そのために考え出した答えなんだ。

 自信を持とう。これでいいんだ。

 不安を振り切って。僕は他の二人を呼んだ。

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