プレゼント - 2
とりあえず、店の前にずっと居ると邪魔になるから、僕たちは離れた場所にあった休憩用ベンチに移動した。
一応、店の前に置いてあったパンフレットも貰って来た。その表紙には看板に書かれてあったことと同じ内容が書かれている。
ベンチに座るなり、天夏ちゃんは深々と頭を下げた。
「ほんっとーにごめん。今年の限定グッズがいつもと違うこと言わなきゃって思ってたんだけど、すっかり忘れちゃってた」
天夏ちゃんの声はしょんぼりしている。責任を感じているのかもしれない。
「まあグッズが増えたって言っても、キーホルダーはあるんだろ?ならそれ買えばいいじゃん」
僕はパンフレットを開いて、キーホルダーがあるか探してみた。するとすぐに見つかった。
「春ちゃん、これ見て」
隣に座る春ちゃんに見えるように、パンフレットを指差す。そこには数種類のキーホルダーが並んでいる。
「あるじゃん。じゃあこれ買えば‥‥‥」
「ちゃんと見て。ほらここ」
僕は説明書きのところを指差した。
そこに書いてある内容は要するに、去年発売されたキーホルダーが今年も復活している、ということだった。
春ちゃんがその説明を読んでいるなか、天夏ちゃんが口にする。
「今年のキーホルダーは去年と同じものなんだ。去年買えなかった人が、今年買えるようにって」
「これ、咲良ちゃんは持ってるの」
「うん。それと同じものは咲良ちゃんも持ってる」
パンフレットと睨めっこしていた春ちゃんが、勢いよく顔を上げた。
「それヤベーじゃん!持ってるんだったら、買う意味ねえじゃん!」
「だから、他のプレゼント考えなきゃね」
僕が言うと、春ちゃんは大きくため息を吐いた。
「マジかよ‥‥‥何が良いのか分かんねえよ‥‥‥」
二人の苦しむような声を聞きながら、僕はパンフレットに目を通す。
今年の限定グッズは、ぬいぐるみ、ブランケット、マグカップ、マフラー、トートバッグ、入浴剤の七つらしい。そういったグッズには『はむはむ』のキャラクターたちが冬らしい格好になって印刷されていた。
プレゼントを選ぶとしたら、やっぱりこの七つのなかから選んだ方がいいだろう。
「なあ、プレゼント何にする?」
肩越しに、春ちゃんがパンフレットを覗き込んでくる。
「このなかだとどれがいいかなあ‥‥‥天夏ちゃんはどう思う?」
「そうだなあ‥‥‥わたし的にはこのなかのどれを貰っても嬉しいんだけど、そんなにお金も持ってないし‥‥‥」
今日の予算はひとり千円、三人で三千円だ。
そしてグッズの値段は、一番安くて八百円近く、高い物だと三千円。
あれもこれもとグッズを買う余裕は無い。一つか二つに絞り込む必要がある。
すると突然、天夏ちゃんが「あ」と声を上げた。
「それじゃあ、それぞれで良いと思う物を選んで紹介し合おうよ。それで、3人でこれが一番良いって思ったものを買うっていうのはどうかな?」
つまり、プレゼンってことかな。それぞれで商品を選んで、他の二人を説得する、みたいな。
確かにずっと悩んでいるよりもいいアイデアだ。
「うん、それが良いかもね」
「俺、自信無え‥‥‥」
そうして、僕たちのプレゼントプレゼンが始まった。
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