第12話ギーズ公爵side~異母姉の結婚~
私の母、ジャンヌ・ギーズは父の後妻だ。
母は元々、父の先妻パルカ・エリザベータ・ギーズの専属侍女だった。
本来なら「侍女上がりの公爵夫人」と陰口を叩かれる立場だろうが、母の場合は、そうはならなかった。
理由は簡単だ。
母は、公爵夫人の侍女になる前は王宮の侍女として活躍していた。
子爵令嬢で、母は国王陛下の乳母の娘でもあった。
父は元第二王子。
何が言いたいのかというと、臣籍降下して「公爵」となった第二王子が異国の、それも病弱な女性を妻に迎えるにあたり、その妻の代わりに家政を預かる人間が必要になった。
その際に、母が抜擢されたというわけだ。
王家が直々に願い出たというのだから、母への信頼は厚い。
先妻は娘を産むとすぐに亡くなった。
その娘というのが私の異母姉のミリアムだ。
幼い娘を養育するにあたり、母親代わりになれる存在が必要になった。
当然、当てはまるのは、母だ。
王家に忠誠を尽くす母としては断るという選択肢はなかった。
そんな両親から生まれたのが、私だ。
私と異母姉は二歳しか違わない。
だから幼い頃は姉のミリアムが「異母姉」だとは知らなかった。
両親が姉を優先するのは、病弱ゆえだと思っていた。
それがおかしいと気付いたのはいつだったか。
交際範囲が広がり、他家との交流が活発になった頃だったろうか。
それとも親切でお喋りな大人達からあれこれ吹き込まれた頃だったろうか。
もうあまりよく覚えていない。
姉が「異母姉」だと知っても特に驚くような年齢でもなかったせいだろうか。
どこかで異母姉に対して丁寧すぎる両親に、何かを感じていたせいかもしれない。
産みの母親と同じように病弱な異母姉。
彼女の存在は私にとってあまり影響はなかった。
ただ、あれほど病弱なのだ。異母姉に結婚は無理だとは、子供心に思っていた。
結婚できたとしても家政は無理だろうし、社交界に出るなどもっと無理だ。子供を産むにしても命がけになるだろう。いや、その前に異母姉の場合は「いつまで生きられるか」というレベルの問題か。
だから、私は異母姉を可哀想だと思っていた。
あの時までは――
二十年前。
私は十三歳で、異母姉は十五歳だった。
「お父様、お願い!」
「しかしな……」
「彼でないと嫌です!」
「ミリアム……」
「どうしてもキリアン様と結婚したいの!」
異母姉は、キリアン・ラ・リブロー伯爵子息に恋をした。
騎士の任務として公爵家を訪れた彼に、一目惚れしたのだ。
そして、キリアンと結婚したいと両親……この場合、父上にだろう。泣いて訴えていたのだ。
【改編】侯爵令嬢は死なず、ただ黙って消え去るのみ。なので、去った後のことは知りません! つくも茄子 @yatuhasi2022
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