第11話ギーズ公爵side~姪の失踪、二日目~
「エドモン!大変なことになったぞ!」
「は?」
この時の私は酷く間抜けな顔をしていたと思う。
父のフレデリック・ギーズが激怒して、我が家に突撃してきたのだ。しかも早朝に。
今年、六十七歳になる父は息子の私に爵位を譲ると母と共に領内にある別荘に隠居していた。その父が、本邸の屋敷にやってきたのだから驚くなという方が無理である。
「父上、こんな朝早くから……一体どうされたのですか?」
「どうしたもこうしたもない!あの若造がとんでもないことをしてくれた!」
「は?」
父の怒りは相当なもので、怒鳴り散らしていた。
本当に何があったというんだ?
リブロー侯爵家に何かあるのか?
こんなに怒り狂っている父の姿を見たのは初めてだったので困惑するしかない。
「ち、父上、少し落ち着いてください」
私は父を宥めながら、詳しい話を聞くことにした。
「マリアンヌが行方知れずとなった!」
「は?マリアンヌが?」
父の言葉に私は思わず耳を疑った。
マリアンヌは異母姉の娘。
私にとっては姪に、父にとっては孫娘になる。
そのマリアンヌが行方知れずとは……。
どういうことだ?
「昨日から屋敷に戻っていないそうだ。しかも馬車ごと消えている」
「は?それは本当ですか?」
「本当だ!今朝、連絡があった。間違いないそうだ」
「そうですか……」
「儂は今すぐ王都に向かう!お前も付いてこい!」
「は?私もですか?」
「当たり前だろう!お前は儂の息子だ!それに、マリアンヌはお前にとっては姪だろうが!心配じゃないのか!」
「それは……」
私は思わず口籠った。
どう返答していいのか分からなかった。
異母姉のミリアムとは仲が良いわけではなかった。仲が悪いということもなかったが……。
姪のマリアンヌにしてもそうだ。
幼少の頃に会ったことがあるだけで、それも数えるほどしかない。
可愛がった記憶すらない。そんな希薄な存在だった。
マリアンヌが産まれた経緯を知っているせいだろうか。
どうしても可愛がれる気がしなかった。
あの子のせいではないと分かってはいる。
だが……。
「分かりました。私も同行します」
私は父に同行することを告げたのだった。
マリアンヌを見るたびに罪悪感がこみ上げてきた。後ろ暗い気持ちにさせられた。
そのことが私をマリアンヌから遠ざけさせていたのは事実だ。
異母姉が亡くなってからは、さらに。
私はあの子の存在をなるべく意識しないようにしてきたのだ。
『リブロー侯爵家に任せておけばいい』
『親族とはいえ、これはリブロー侯爵家の問題だ』
『ギーズ公爵家がしゃしゃり出るわけにはいかない』
父を諫める言葉を口にすることはなかった。
グッと喉奥で堪えて、出た言葉が「同行します」の一言。
父を一人で行かせるわけにはいかなかったし、このまま放置するわけにもいかないと思ったら自然と言葉に出てしまっていた。
「よし!ならすぐに支度しろ!」
父に促されて、私はすぐに支度を始めた。
「後は、頼む」
「はい。お任せください」
私は執事に後のことを託した。
暫く留守にするが、何かあったらすぐに知らせるように伝えて。
父と共に王都への馬車に乗車した。
私は気付いていなかった。
何故、父がこんなに早くマリアンヌの不在を知ったのかについてを。
父に連絡をしてきたのが誰かということにも。
マリアンヌには、隠された秘密があったことにも……。何も知らなかった。
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