第9話初めての列車5

 列車は列車でも、私達が乗っているのは「寝台列車」。

 そのため、客室にはベッドルームとリビングルームが一緒になった部屋でした。


「どれくらいで着くのかしら?」

「そうですね、一週間ほどで到着するはずです」

「早いのね」

「それが列車の最大の魅力です」


 速くて安全。

 この二つが揃っているからこそ、人は安心して列車に乗れるのだと。


「それにしても、旅行鞄を持った集団が多いわね?」


 窓からは、列車を降りる人達が見えていました。

 家族連れも多くいましたが、それよりも気になるのが年齢層がバラバラの集団です。

 着ているものを察するに裕福な人が多いのだと思います。

 ただ、何と言っていいのか……。


「派手な集団が多いのだけれど。何かあるのかしら?」


 悪趣味というべきでしょうか。

 これからパーティーに参加でもするのかと疑うようなドレス姿に、じゃらじゃらと貴金属を身にまとった集団。

 中には、男性もいましたが、数は少ないです。

 女性の殆どは化粧が濃くて……白粉を真っ白に塗っている人もいるくらいです。一体、何の集団でしょう?

 正直、あまり関わり合いにはなりたくない人種というべきでしょうか。


「あの集団は、団体旅行に参加しているようですね」

「団体旅行?」

「はい。旅行会社が主催する団体旅行です。

 あの集団は、旅行会社の企画するイベントに参加するために集まった人達でしょう」

「ああ、なるほど」

 

 だから、年齢層がバラバラなのですね。

 でも、それにしては……。


「恐らく、富裕層を対象にした団体旅行だと思われます」

「富裕層?」

「はい。ブルジョワと呼ばれる人達です」

「若い人も多いわ」

「はい、若くして巨万の富を築いた人達なのでしょう」


 ジャンヌが言うには、自由貿易によって財をなした人達らしいです。

 一代で財を築いた人達が多く、その人達をターゲットにした企画が旅行会社以外にも多く行われているのだとか。


「ブルジョワの人達だけではありません。今は旅行が各国のブームになってきているのです」

「ブーム?」

「はい。富裕層の旅行は、一種のステータスになっているのです」

「そうなの?」

「はい。あいにくとロラン王国では、そういったブームはまだ来ていませんが、そのうち流行るのではないかと思います」


 なるほど。

 ロラン王国は大陸でも南の端に位置していまして、ブームの波が遅れてくることもしばしば。

 ジャンヌの言う通り、これから旅行ブームが来るかもしれないという話も頷けます。


「ただ、そうした旅行にも問題点はあります」

「問題点?」

「はい。一概には言えないのですが、富裕層の人達の中には自分の財力を誇示するために豪華客船を貸し切って旅行する人もでてきているようです」

「まぁ」

「それと、他国のルールに従わず、お金にものを言わせて好き放題する人もいるようです」

「それは……問題ね」


 自分達の国にとっては当たり前の常識でも、それは国が違えば通用しなくなるものです。

 そうした常識の違いから、トラブルになるケースも多くあるようで……。

 自国で通用したのだから、それに従え、というのは、さすがに横暴が過ぎるというものでしょう。


「そんなわけでして、近頃、帝国では旅行に関する新たな政策が打ち出されるのではないか、という声もあるようです」


 どういったものになるのかは、まだ決まっていないそうですが、旅行に関する条例のようなものが制定されるのではないか、と言われているそうです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る