第8話初めての列車4
「簡単なことです。この政策にロラン王国は旨みを感じていない人が殆どだからです」
「えっ?旨みを感じていない?」
「はい。加盟国の中には、この政策で国が大変豊かになったところもございます。ですが、ロラン王国はそう感じている人が少ないということです」
「つまり、ロランはその政策の恩恵を受けていない。もしくは、微々たるもの、ということ……?」
「はい。マイナスにはなっていませんし、全体的に見ればプラスでしょう。ですが、緩やかなに上昇しているせいか、あまり実感できないのかもしれません」
「急激な変化ではないから、ということかしら?」
「はい。それと……」
「それと?」
「この政策はロラン王国が始めたものではございません。シュゲイン帝国が始めた政策なのです」
「帝国が?」
「はい」
シュゲイン帝国は大陸一の大国。
国の面積だけではなく、人口でも帝国は群を抜いています。
人だけではありません。
歴史も古く、軍も精強を誇っています。
文化、ファッション、芸術、音楽と。
シュゲイン帝国はあらゆるものが、優れているのです。
それがまた各国の憧れの的でもあります。
「最初の加盟国は帝国も合わせて六カ国だったのですが、今は加盟国が三十カ国に増えています」
「そんなに?」
「はい。実を申しますと、加盟すれば経済の恩恵を受けられるだけではなく、安全保障の恩恵も受けられるのです」
「安全保障?」
「帝国が加盟している国を守ってくれるというものです」
「そうなの?」
「はい。帝国が守ってくれるので、その国の経済や安全は保証されます」
「貿易でのメリットがなくとも加盟するわね」
「その通りです。加盟国の中には安全保障を目的にする国も多くありますので」
「でしょうね」
狙われやすい国や、軍隊が小規模な国などはこぞって入りたがるに違いありません。
ロラン王国もそれが目的なのかも……。
数十年前は隣国に領土を狙われていたとも聞きますし、歴史の授業でも領土争いが何度も起きていたそうですから。
「国境検査がない、ということは、帝国では準国民のような扱いを受けられることも意味していますので」
「準国民?」
「はい」
別の意味で面白い政策だと思ったのです。
そうして、ジャンヌが何故、行き先をシュゲイン帝国にしたのかという理由が分かりました。
シュゲイン帝国に行くならば、面倒な手続きもなく出国できますし、なによりも準国民扱いになるのです。他の国に行くよりもずっとリスクは低いと判断したからでしょう。
それに、帝国は祖母の祖国でもあります。
母方の祖母で、ギーズ元公爵夫人。
私のお母様を産んですぐに亡くなられたましたが、帝国出身だと聞いていました。
もっとも、帝国にいるであろう親族と交流を持ったことは一度もありませんでしたが。
こればかりは仕方がない面もあるのです。
大陸の端に位置するロラン王国は、シュゲイン帝国から遠すぎます。
いくつもの国を経由しなければなりませんし、船で直接行くこともできません。
列車ができたのが私が生まれる少し前だという話ですし、馬車で移動となるとそれだけで大変というもの。おいそれと来られない距離ですからね。
それを考えますと、お母様も帝国にいる親族のことは何も知らなかったのでしょう。
私、何も聞かされていませんもの。
あれこれと考え込んでいたせいでしょうか。
私はジャンヌが小さな呟きを漏らすのを聞き逃していました。
「必ず帝国までお連れいたします、皇女殿下」
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