第7話初めての列車3
「お嬢様、紅茶が入りましたよ」
「ありがとう」
ジャンヌが入れてくれた紅茶を口にしました。
「……美味しいわ」
「よろしゅうございました」
ジャンヌが笑っているわ。
珍しいなんてものではありません。
こんな笑顔は初めて見ました。
ニコニコしているジャンヌの姿はなれません。
なんと言って良いのか。
「でも、不思議ね……。どうして列車に乗れば手続きなしで国を出られるのかしら?」
「お嬢様、それはですね。この列車は特別だからです」
「特別?どういうことかしら?」
「この列車がロラン王国と他国を結ぶ唯一の路線だからです」
「この列車が?」
「はい」
特別なのは分かりましたが、どうも腑に落ちません。
手続きなしで出国しているのですもの。
「唯一の路線なのは理解したわ。でも、だからと言って審査なしで出国できる理由にはならないでしょう?」
「そういう政策を周辺国と取り交わしているからです」
「政策……?」
初めて聞く内容です。
政策と言われてもピンときません。
そんな政策があったかしら?
聞いたことはないのだけれど。
屋敷でも話題になっていませんでした。
噂にもなっていなかったので、私としては困惑するしかありませんでした。
「お嬢様、本当にご存知ないのですか?」
「ええ……。知らないわ」
「そうですか……」
私の言葉に、ジャンヌは考え込んでしまったわ。
何か拙いことでも言ったのかしら?
もしかして私が知らないだけで有名なことだったの?
それでも噂になっていなかったし……。
前の時だってそんな話は聞かなかったわ。
「お嬢様、内容を少しお話してもよろしいですか?」
「ええ……」
「この政策は、各国の市場を開放する政策です」
「市場を開放する政策……?」
「はい」
ジャンヌが言っている意味が分かりません。
市場を開放するとはどういう意味なのかしら?
「物流を始め、あらゆるものの自由な移動を国境検査なしに行う政策です」
「それって、つまり……」
「はい。貿易が自由化されているということです」
「貿易が自由化……」
「はい」
ジャンヌが言っている意味は理解できますが、あまり実感はわいてきませんでした。
貿易が自由化と言われましてもね。
「お嬢様がご存じないのも無理はありません。恩恵を受けているのは主に商人ですから」
「商人……」
「はい。もちろん、国にも恩恵はあります」
「と言うと?」
「関税の撤廃です」
「関税の……」
「はい。政策に加盟している国では関税が撤廃されています。もちろん、その国々では国境検査はありません」
「そう……」
そんな重要な話を知らなかっただなんて……。
なんだか情けなくなってきました。
「実を言いますと、この政策は随分前から行われていたものなのです」
「そうなの?」
「はい。お嬢様がお生まれになられるずっと前からです」
え?
そんなに前からあったの?この政策は……。
「どうして、そんな重要な政策が広まっていないの?」
もしかしたら、私が知らないだけ、と言うのも有り得ますが。
社交界で噂にもならないというのはさすがにおかしいです。
前の時も知らなかったのですから。
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