12月25日

 インターホンが鳴ってすぐに渚が玄関から飛び出す。

「メリクリっ!」

「メリークリスマス、渚」

「あがってあがって」

「お邪魔します」

 束沙はビニール袋を渡す。

「とりあえず、おやつ買ってきたよ」

「え、マジ!?ありがと〜!」

 渚は受け取って早々に中を覗く。

「お〜、唐揚げだ〜!」

 母さ〜ん、と言いながら台所に向かう。束沙も台所に行くと、母親は料理の最中だった。

「こんにちは、束沙くん」

「こんにちは。洗面所で洗ったほうがいいですか」

「ええ、そうしてほしいわ」

「束沙、その紙袋は?先持ってく?」

「ううん、後で渡すよ」

「おっ、おっけ〜」

 渚は先に階段を上がる。

「あ、今日は部屋で。こたつは使われてっから」

「わかった」

 手洗いとうがいをした後、束沙は階段を上がる。

「風鈴ついたままなんだ……」

 2階の通路に出て、柵を回って右手の部屋に行く。2度ノックすると、渚が内から戸を開けた。上にブルゾンを着ている。

「寒くてごめんな〜」

「大丈夫だよ」

 机を挟んで向かい合って座る。

「ほい、いつもので良かった?」

 束沙は頷いて渡されたお茶を一口飲む。

「1個いただき〜!……うま。意外とコンビニの唐揚げ久々かも」

「おいしかったなら何よりだよ」

 束沙は微笑み、自分の口に1個運ぶ。

「あったかいうちに食ったほういいよな」

 そう呟いた渚も手を伸ばす。

 空になった紙の箱をたたんで脇に置いた後、渚はラッピングされた箱を机の上に置く。

「んじゃあ改めて、ハッピー・メリー・クリスマ〜ス!」

「プレゼント、用意してくれたんだ」

「おう、今回は流石に忘れなかったぜ!」

 束沙は箱を自分側に寄せる。

「開けてもいいの?」

「いや、開けてくれよっ!?」

 できるだけ包みを破らないように開けていく。

「あっ、イヤホン、しかも落ちにくいやつ……!」

「欲しいかなって思ってさ~」

「聞いてみてもいい?」

「ど〜ぞ〜」

 ケータイの設定を行い、耳につける。

「……とってもいい感じだよ!ありがとう、渚」

 渚はニッと笑う。

「今度は僕から渚に。ハッピー・メリー・クリスマス」

 束沙は持って来た紙袋からニット帽と手袋を取り出す。

「おっ!かっけぇしあったかそ〜!ありがと〜っ!」

「喜んでもらえて良かったよ」

 早速身に着ける渚に束沙は微笑む。

「あっ、夕飯食べてってくれっか?」

「え、いいの?」

「母さんがそのつもりで張り切って用意してっからさ」

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」


「ただいま。いつものアレ、買ってきたぞ〜!」

「よっしゃー!肉だ〜!」

 帰ってきた父親から渚は大きめの箱が入ったビニール袋を受け取り、台所に持っていく。父親は束沙を見ると、一瞬固まって叫ぶ。

「し、しまった〜っ!」

「えっ、どした?」

「束沙くんの分を忘れていたっ!」

「え〜っ!?」

 それを聞いた束沙が口を開こうとしたとき、母親が言う。

「困ったわね……束沙くんの分のシチューは用意しちゃったし……」

 沈黙が流れる。

「……俺の分って何個買ってきた?」

 渚は箱の中を確認する。

「一人3個で買ったぞ」

「じゃあ俺のやつ2個束沙にあげるよ」

「えっ、僕の分なくていいよ」

 束沙が慌てたように言うと、渚は笑って言う。

「いや〜、俺さっき唐揚げ食ったばっかだし」

「それ僕も同じだから」

「母さんが焼いてたクッキーも食べたいし」

 父親は腕を組み頭を振る。

「いや、渚のではなく、責任を取って」

「父さんは仕事で疲れてんだから食べなよ!」

 遮る渚のお腹が鳴る。

「あ……」

「やっぱり渚は食べなよ。シチューもらえるだけでもありがたいし、家族団欒に入ってしまって申し訳ないし」

「いやいや……」

 軽い口論が続いているうちに、母親は電子レンジでナゲットを解凍して3人の間に入る。

「これも追加してみんなで分ければ解決する?」

「母さん、さっすが〜!」

「わざわざありがとうございます」

 数分後、4人はコタツに入って夕食を楽しんだ。

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