付き合うまで

第3話

 高校2年の始業式の日、俺は不安や期待の入り混じった感情を抱えながら、新しいクラスの扉を開けた。そして黒板に貼られている座席表をみて自分の席につく。俺は真ん中あたりの席か。隣の席には中学以来の親友である、柊正彦の名前があり、少し安堵する。このクラスにはある程度自分と仲のいいメンツが配属されていることがわかっている。席に座って周りを眺めているうちに、程なくして、正彦が登校してくる。

「正彦おはよう」

「久しぶり。最近1週間くらい会ってなかったね。サッカー部が忙しくて。調子はどう?」

「どうもこうもないさ。暇だった。俺は帰宅部だからな」

「じゃあ部活にでも入ってみたら?」

「今からはちょっと、、、」

 正彦はイケメンで性格もいいので女子にモテている。対する俺は帰宅部で根が暗そうに見えるし、あまり、イケメンってわけではない。 

 そんな自分に情けなさを感じて少しがっかりし、眠さも相まって、机に突っ伏していると、後ろから現れた女子に話しかけられる。

「おはよう、藤原くん」

 話しかけてきたのは椿花香。成績優秀で、性格も優しく真面目な優等生。そして様々な男子から告白されているらしい。彼女とは高校で初めて知り合った。それ以来彼女は俺に親しく接してくれている。

「おはよう花香。冬休みの間はどうしていたんだ?」

「ずっと塾に行っていました。行かされていたという表現が正しいかもしれませんが」

 彼女の家は相当有名な家柄らしく、親も教育熱心らしい。お嬢様も大変だな。彼女の席は一番後ろ。結構離れていたのは残念だったな。

 そんな感じで周囲の様子を観察していると、いつのまにかホームルームの時間になっていた。そして文彦の反対の俺の隣の席に時間ギリギリで長い黒髪の女の子が駆け込んできた。俺は隣の席同士仲良くして行きたいという思いで、ホームルームが終わったあと、早速話しかけてみることにした。


「ねぇ君、名前は?」

「椿飛鳥だけどなに?」

「俺は藤原楓。これからよろしく」

「はい」


と、まあこんな感じで最初の会話はとても素っ気ないものに終わった。今思うと考えられないくらい。


 高二初めての日だったので始業式などを行いすぐに帰宅した。すると、珍しく兄が家に戻っていた。

「今日はなんで来た?」

「まあたまにはかわいい弟のところにもこのイケメンな顔を見せてやろうと思ってね」

余計なお世話だな。そして余計な言葉も多い。まあイケメンなのは事実なので認めるが、この男には大きな欠点がある。

「小学校に常習的に盗撮しにいってるやつに言われたくないわ」

「その話を持ち出さないでくれよ。俺は基本的に実家ではおとなしくしてるから」

 それはそうだ。実際コイツが変態であることは俺にしかバレていないだろう。

「じゃあ一人暮らししてる家を覗きに行っていい?」

「おまえに共犯になる覚悟があるなら」

「遠慮します」

  コイツの家には自分で収集した「写真集」が飾られていることが容易に想像できた。

「せっかく帰ってきたのに冷たいな。宿題でもしてやるか」

「よろしく」

 兄は東京の有名な国立大に通っている。頭がよく、顔もいいのにロリコンなのが残念でならない。

 そして俺がラノベを読み漁っているうちに兄は宿題を終えていた。その後アイツは親が帰ってきてから理想の兄を演じながらご飯を食べて帰っていった。

 

 その後高二の初登校から1週間程が経ち新たなクラスにも慣れてきた頃、俺はいつもの電車にのって学校へ向かっていた。そして俺はいつも通り、端の席に座る。俺は始発の電車に乗っていつもこの席を確保している。そしていつものゲームを開く。そしていつも通りプレイを開始しようとした時、隣に見覚えのある女子高生が座っていることに気づいた。それは隣の席の椿飛鳥だった。

 





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2025年12月28日 16:00

俺を道連れに死のうとする彼女とそれでも彼女が好きな俺 @729534

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