組のトップは俺だ【ショート1話完結】

ニギアカガネ

組のトップは俺だ

「オレは苦労して、この組をここまで大きくしてきた……」


 組長はデスクに肘をつき、薄暗い事務所の窓越しに外を眺めながら独り言を漏らした。


 今日も取り立ての進捗が悪く、焦りを感じさせる。


「あそこの取り立てはどうなってる!手を抜いているのか!」

 幹部は汗を拭い、うつむいて答えるしかなかった。

「す、すみません……次こそ必ず……」


 幹部は自室に戻ると、怒りを抑えきれず拳を机に叩きつける。

「カシラ、あの縄張りの件、どうしてあんな下手を打つんだ! 俺の顔に泥を塗るな!」

 電話を手に詰め寄り、カシラに怒声を叩きつける。


 カシラは倉庫の奥で若い衆を睨む。

「お前ら、また縄張りの見回りを怠っただろう! 他所の組に舐められるようなマネをして、俺の顔に泥を塗るな!」

 若い衆は俯き、言い訳することもできず、ただ黙ってその場に立っているしかなかった。

 苛立ちは部屋の隅で丸くなっている、小さくてふわふわの可愛いチワワに向かう。


 若い衆は、やり場のない怒りを抑えつつ、丸めた新聞紙をチワワの目の前に投げつけた。

 だがチワワは小さな体を丸め、キラキラした瞳でじっと見上げるだけ。

 しかしその目には、若い衆の澱んだ感情が映っていた。


 そして、丁度よく組長が倉庫に通りかかった瞬間、チワワは勢いよく飛び上がり、組長の足首に小さな牙を食い込ませた。


「ガブリ」


「イテテテテ」

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