団三郎狸(新潟県・佐渡市)

 新潟県佐渡市相川地区に伝わる「団三郎狸(だんざぶろうだぬき/だんざぶろうむじな)」は、芝右衛門狸・太三郎狸と並び称される“日本三名狸”の一柱である。佐渡では狸を「狢(むじな)」とも呼ぶため、伝承や文献では「団三郎狢」と表記されることもある。


 その伝説によれば、団三郎は佐渡の金山近くに棲み、並外れた妖術と化け術を操ったとされる。夜道に幻の壁を現して人を迷わせたり、蜃気楼のような幻影を見せたり、木の葉を金に化かして買い物をしたりと、典型的な“狸の化かし”を自在に行った。中でも、自らが作り出した幻の屋敷へ人を招き入れ、饗応するという話は有名である。


 しかし団三郎は単なる妖術の使い手ではない。病にかかると人間に化けて医者にかかり、また貧しい者には金を貸すこともあったとされる。借用書に金額、返却日、自分の名を記して判を押して置いておけば、翌日にはその借用書が消え、代りに金が置いてあった、という逸話が残っている。


 死後、団三郎は「二ツ岩大明神」として祀られ、佐渡島内の信仰を集める存在となった。二ツ岩には現在も石祠があり、地元の人々によって手厚く守られている。


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 団三郎狸は、江戸時代から明治・大正にかけての奇談集や口碑にもたびたび登場してきた。浮世絵や版本にも姿を見せ、妖術使いとしての側面と、誠実で人情深い存在としての二面性が強調される。佐渡の金山文化や在地民間信仰と結びついたこの狸の物語は、単なる伝説を超え、土地の歴史や精神風土を体現する象徴として根付いている。


 現在でも、二ツ岩大明神を訪れる人々の多くが、団三郎狸への親しみと敬意を込めて手を合わせる。その存在は、佐渡における“神とも妖ともつかぬ境界の存在”の典型であり、今なお人々の想像力と信仰の対象であり続けている。

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