この静謐と耽美。少女と少女がゆっくりと紡ぐ、幻想的な雰囲気が印象的でした。
「紅茶」という名前の少女は、ずっと一人きりで過ごしていた。「愛情」というものが全般的にわからず、特別な存在というものがどんなものかも理解できないでいた。
そんな紅茶でも、現在は「木苺」という少女を傍に置いている。その子が近くにいれば満足に思え、その静かな時間を満喫しようとしていたが……。
全編を通し、ゆったりと時間が流れているような「静かな時と場所」の雰囲気が強く感じられます。
まるで人里離れた場所で隠居しているかのような、「森の中の魔法使い」みたいな雰囲気を持つ紅茶。
でも、彼女がいるのは果たしてどんな場所なのか・
なぜ、紅茶の住む場所は、こんなにも静かで、こんなにも「全て」から遠ざかっているような雰囲気があるのか。
ファンタジーとは昔から「逃避の文学」と呼ばれてきた。その言葉に従えば、彼女たちが身を置く幻想的な雰囲気の空間は、紛れもなく「ファンタジーなところ」と呼べるのかもしれない。
耽美で、残酷で、頽廃的で……同時にとっても切実な物語です。静かに静かに語られるからこそ、紅茶の内側にある「激しさ」が浮き彫りになる。
まさに「幻想文学」と呼ぶにふさわしい、雰囲気抜群の一作でした。