第5話
目が覚めた。
寝起きがいいタイプなので意識の覚醒は早い。彼氏にどうですか?
……なので未だに異世界であることもバッチリだ。あーあ。
カーテンの隙間から漏れる朝日が、ぼんやりと部屋の中を照らしている。
なんなら見慣れた天井だ。
うっ、うっ、うぅ……もうそろそろ『諦めフェイズ』入りすべきなのかな?
こっちに来てから一年と半年以上が過ぎた。
過ごしやすくなってきた昨今に、高校生だったら二年目の二学期も半分を過ぎたところかなぁ……なんて自動的に当てはめてしまう。
何も四季までマネしなくてもいいんじゃない? ……異世界さんさぁ。
なんらかの奇跡が起こって、なんとか日本に帰れたとしても、同級生達は最終学年か……。
…………――――ッ?!?!
お、俺の青春が……! まだ間に合うって言って……! 誰か言って?!
大検受ければいいんじゃない? とかじゃないんだよ! 今しか出来ない甘酸っぱさが欲しいんだ! ――具体的には彼女とか作って手を繋いで登下校がしたかったんだ……!
……どうしよう? 今から必死に帰る方法を探してキャンパスライフに望みを掛ける、か……? それとも時間跳躍的な魔法を開発して異世界転移時まで戻るって案の方が――いやそれには若返りが必須じゃない? 爺で青春は、ちょっとなあ……。校長先生より年上の生徒ってなんだよ。
「あー、帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたいッ、帰りたいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
枕で叫び声を抑えつつ、ベッドの上でゴロゴロバタバタとしていたのも五分程。
「…………うーし。ストレスの吐き出しはこんなもんかな?」
体力が回復したので、吐き出せていなかったストレスを吐き出しただけである。
『あ、こいつ……』とかじゃない。まだ全然正常だ。だって未だに二次元を愛せるもの。
割と重要だから。異世界とか関係なくメンタルって揺らぐし。叫ぶのって結構なストレス解消になるし。く、癖になるし……!
まあ冗談だよ冗談。
「しかしまあ…………帰り方も分からないんじゃ仕方ない、かな……」
――ハーレムを作るのも仕方ない、よな?
そんな爛れた感じじゃなくて、もっと甘々な……グッとハートを撃ち抜いてくれる感じのメロい何かが欲しかったんだが……。
しゃーない。
これもみんな異世界が悪いんや。
そりゃ異世界に渡った日本男児は皆ハーレムを目指す(偏見)わけだよ。
「まあ冗談……じゃない可能性も視野に入れて検討するのはともかくとして!」
ベッドから起き上がるとカーテンと窓を開けた。
うーむ、快晴……。
これは、神も祝福してくれているということか……?
「もう一年以上経つんだし、そろそろ何か動かなきゃだよなぁ……」
それがハーレムかどうかはともかく。
これも、ようやく生活が安定してきたことによる心の余裕なのだろうか。
『何か』ねぇ……。
やっぱり帰る手段を探すべきなんだろう。
だって帰りたい。
しかし全くのノーヒントでこれが見つかるのかどうかと言われれば……所謂『砂漠で砂金』ってやつになる。
糸口すら分からない。
もしかしたら唯一とも言える手掛かりになりそうな初期スポーン地点だが……森の深部になるため探索が困難だ。よく街にたどり着けたよ。あそこで運を全部使ったまである。
そして『行ったところで……』なのは否めない。というか間違いなく徒労。帰り道で油断から魔物に殺られちゃう未来まで読める。
ならば仕方ない、異世界に根を下ろす算段を立てる――べき…………なのか?
「むむむむむむ」
意外と難しいな。主に諦めがつかないって意味で。
こちとら人生の九割が
それは今後の人生設計においてもそう。
お金を稼げる年齢に至っては、その範囲をより広げようと思っていたぐらいである。
アニメ、マンガ、ゲーム、女の子。
そのどれを取っても大好きだ。
捨てるなんてとんでもない。
そりゃね? 俺もヲタク男子である以上、異世界に来た当初は興奮したしハシャいでたけど……。
もうお腹いっぱいだよ。
どちらかと言ったら断然、家でダラダラしながらアニメを観たり漫画を読みたい欲の方が強い。
今ならファン待望と言われるゲームのサービス開始を深夜待機する時間すら愛おしい。
流行も変わってるんだろうなぁ……。
「……とは言うものの」
どうにも出来ないんだからしょうがない。
結論は変わらず。
「仕事…………行くかあ」
先延ばしである。
もとい、やれることをやっている。
ここまでが毎朝のルーティン。
窓の外の通りで「あいつまた独り言言ってるよ……」「見ちゃいけません」って言われるまでがセット。
ボッチ舐めるなよ?
これでも配慮してるまであるからな?
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