第4話
ハッキリと覚えている。
異世界転移。
……異世界転移だ。
高校の制服が届いたので着てみた。ブレザー。入学後には嫌でも着続けなければいけない制服だったというのに、ちょっと無理した高校だったせいかテンションが上がり……何を思ったのか、そのまま外へと繰り出してしまったのだ。
ブレザーがよくなかった。
中学時代はずっと学ランだったし、その無理めの高校以外も学ランらしかったから……。
勝ち取った冠を被って歩きたかったんだろうなあ。なんというドヤ。我が事ながらテンションって怖い。
しかし根が小心者の隠さないヲタクであった俺は、ドキドキしながらも近所のコンビニぐらいまでしか足を伸ばせなかった。
人通りなんて少ない昼日中の住宅街。
誰に注目もされず……それならそれでホッとしつつ、適当な食べ物でも買って帰ろう――なんて考えていた。
足を止めたのは信号付きの横断歩道。
しかし閑静な住宅街だからか車なんて少ない。
なんなら見渡す限りでは見つからなかったぐらいだが、赤信号を守って足を止めた。
僅かな沈黙。
――ここで帰れば事無きを得られた。
あー……やっぱり制服で歩くのなんてやめりゃよかったか? ……汚れたりしないよな? 万が一にも破いたら、そのまま入学式出ろって言われそう。でもここまで来て出直すのもなぁ……。いやいや考え過ぎ考え過ぎ。新品だからって慎重になってんだな。制服なんて毎日着るものなんだから、そんなに心配するもんじゃないだろ? いいや、さっさと買い物済ませて帰ろう――とかなんとか。
そんなことを考えていたと思う。
信号が赤から青へと変わった。
長年の習慣か、特に意識することなく踏み出した足は――
そのまま異世界の地を踏んでいた。
間違いなく事故じゃない。
なんなら車なんて通ってなかったまである。
死亡時における記憶の混濁云々とかでもないのは、そもそもそんなにスピードの出せる道じゃなかったことからも明らかだ。
つまりトラック転生じゃない。
なんかヌルっと通り抜けた記憶がある。
あれが世界間の移動を意味してるのなら……いやもっと他の感触あったでしょって思う。
巻き込まれでもない。
何故なら異世界でもボッチを貫いている筋金入りだからだ。
友達とか、可愛い女の子とか……可愛い女の子(年上)とか、可愛い女の子(年下)とかと一緒だったら……よかったのに……。
そういう意味では女神様にも会っていない。
というか神的な存在がいるのかも分からない。
説明責任なんてナマイキなことは言わないから、小粋なトークだけでもしたかった。それだけで生きていけたのに……。
本音?
女神様メロ展開が欲しかった……! 切実に!!
年齢イコール彼女無しの俺にもチャンスがある……そういうのが異世界転生だって聞き及んでおりました。
やっぱり死ななきゃ貰えないチャンスなんだろうか。異世界めっちゃブラックだわ。
――でも『チート』はあった。
しっかりと受け取ってます。
まず言葉や文字関連。
バッチリ日本語変換されてます。ありがてえありがてえ。
おかげで文明を失わずに済んでいる。
初手サバイバルなんて水関連で早々な詰みがあり得た。
割と直ぐに魔法に辿り着いたけど、その場のノリとテンションで川の水とか飲んでたら……早々なトラウマ事案だっただろう。
サバイバル知識なんてフンワリしかないのだから、異世界人とのコミュニケーションが取れる能力ってだけでありがたさしかない。
これが日本語チートってやつか……。元の世界でも割とチートみたいな言葉だったけど。
最初に関して言えば、初期装備も貰っていた。
……も、貰ったというか拾ったというか。不可抗力ってあると思う。
こっちの世界に来て早々、初期地点の近くに
完全に白骨化していて、どこか置物のようだった骸骨くん。
――の、直ぐそば。
意味深に落ちていた小袋に、興味を引かれなかったと言ったら嘘になる……。
めっちゃ秒で「初期アイテムげとぉ!」とか言っていた外道は置いておいて。
中には白っぽい金貨が数枚。
これが本当にありがたかった。正しい意味でのチートだった。
「へっ、これっぽっちかよ」とか言っていたクソは、その後に天罰を食らっていたので許して上げてください。
言語と金貨。
この二つのチートのおかげで、割とスムーズに異世界生活をスタートすることができた。
そして更にもう一つ。
その、もう一つのチートのおかげで、今の生活も維持できている。
まあ、なんだ……。
こうして考えてみると、
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