⑥-3


〈※二人はさらにジェンガに熱中している。〉



【タカ】おっと、手を疎かにすんじゃねーぞ。

【トビ】そろそろ、やべー感じになってきたな。おい。


【ツバメ】‥‥‥‥。


【タカ】これ、最高記録じゃね。

【トビ】どうするよ。未知の領域に到達しちまったよ。


【ツバメ】‥‥‥‥。


【タカ】土台がいいからじゃね。

【トビ】だな。


【ツバメ】‥‥‥‥。


【タカ】おい、ここまできて簡単に崩すなよ。崩れたら破滅ぐらいの気持ちでやろうぜ。

【トビ】マジかよ。じゃ、黙って集中すっか。慎重に行こうぜ。



          ⚪︎



    そうなんだ

    僕の人生は順調なんだよ


    お爺ちゃんが言うには

   「お前の前途は、光り輝いている! がっはっは!」

    なんだって


    そう

    すべて上手くいっているはずなんだ


    僕が8年間の人生で(明日で8歳)

    積み上げてきた地位は

    盤石なはずだよ


    はず‥‥

    なんだけど


    でも僕は

    どうしたって考えてしまうんだ


    だから大丈夫だって

    ぜんぜん平気だって

    何度も言い聞かせてみるのだけれど

  

    君との未来のことを真剣に考えると

    途端にぜんぶのことが難しくなってしまう


    不安をなくしたくて

    失敗したくなくて

    たくさんのことを

    考えれば考えるほどに臆病になってしまう


    お爺ちゃんに相談したら

   「愛があれば大丈夫だ

    若いモンは迷ったら

    ぜんぶGOだ」

    て言ってくれた


    だから、多分、きっと、大丈夫

    考えすぎなだけなんだって

    これからも頑張ってゆけば

    ぜんぶ上手くいくんだって

    平気なふりをしてみたのだけれど

    でも本音はずっと不安なままなんだ



          ⚪︎



【タカ】おいおいおい。

【トビ】まだ行けんのかよ。ヤバいだろ。


【ツバメ】‥‥‥。


【タカ】ちょっと恐くなってきたわ。

【トビ】この領域は来たことなかったからな。コエー。



          ⚪︎



    君と僕が結ばれるためには

    解決しなくてはいけない

    問題がたくさんある


    年齢差のこと

    お仕事のこと

    新しいお家のこと

    ペットのこと   

    家族のこと

    学校のこと

    お金のこと


    計画を練って

    将来のことをいっぱい考えてみたのだけれど  

    これで完璧だって強がってみたのだけれど


    そうだね 

    本当のことを言えば

    多くの不安が

    放置されるままになっていて

    何も解決できていないんだ


    僕には

    知らないことが多すぎて

    毎日、一杯一杯になりながら

    たくさんのことを勉強するだけになっている



          ⚪︎



【タカ】考えすぎんなよ。思いきりを忘れんな。でも慎重にいけ。

【トビ】んなこと言ってもよー。


【ツバメ】‥‥‥。


【タカ】うおー、やべ、やべ、やべ。これ行けるか? 

【トビ】ヤバいべ。ヤバいべ。マジで恐えよ。

【タカ】お、取れるぜ。



          ⚪︎



    僕が大人だったらすぐに解決できるのに

    大人になった僕ならば自信に溢れているはずで

    解決できないことはなんて何もないはずなのに

    でも、どう背伸びしたって

    今の僕はまだ子供で


    小さくて

    弱くて


    僕は子供であることで

    やらなければいけない全部のことが

    何も解決できていない


    ずっと迷っている

    いつも君との未来のことを考えている

    真剣になればなるほどに

    怖くて、苦しくなってしまうなんておかしいよね


    でも、あの時

    君が告白してくれたことが

    嬉しかったから

    僕は今もこうして頑張れるんだ


    今の僕に必要なのは勇気さ

    神様を信じて

    とにかく前に踏み出すこと


    もうお祈りをしたから大丈夫なんて 

    ぜんぜん言えないけれど

    震えているだけの僕には

    そろそろ、さよならを言わなくちゃ


    僕はもっと神様のことを信じてみるよ

    そうしたら君との未来ことを

    けして諦めるなんて言わない

    強い僕になれるはずだから


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