④-3


〈※続けて二人は作業をしながら会話をしている。ツバメに現代アートが完成しつつある。〉



【トビ】フラれるたびに痛みや苦しみを知るわけじゃん。

【タカ】まあな。



    なんとか気をそらさないと



【トビ】ゲームなんかで例えれば、俺らは膨大な恋愛経験値を得てるわけよ。

【タカ】そうだろうな。



    何かないかな?



【トビ】で、気づかない内に男っぷりに円熟味が増してきたというか。色気が出てきたとか。そういうのがある気がする。

【タカ】最近、俺もそんな気がしてたぜ。気づかない内にイケメンレベルが気持ち3ぐらいは上がってると思う。



    お爺ちゃんの㊙︎攻略法も使えそうにないし



【トビ】ここのところ毎朝、洗面台に立って、鏡の前でこう思うんだよ。こいつ誰? まじでヤバい。マジでイケメンじゃん。

【タカ】そうだぜ。気づかないかもしれないが、お前の顔はかなりヤバい方の部類だぜ。



    ダメだ

    うつ手がないよ



【トビ】少年から大人な男に変わる過渡期つーの。鏡に映るそいつの顔を見てフェロモンやべーとか思うのよ。

【タカ】すまねぇ。マブダチな俺でもお前のその顔面はさすがにフォローできないんだぜ。ま、世界は敵でも、俺だけはいつだってお前を許すから好きに言いな。



    ああ

    神さま、助けて



【トビ】それでな。ちょっと惚けて、しばらくしたら、いつもハッとして気づくんだよ。鏡の中の男は実は俺でした、てな。

【タカ】あ、その現象は俺もよくあるわ。ビックリするよな。家の鏡にハリウッドスターがいるだもんよ。



    ‥‥‥‥‥。



【トビ】でさ、語りかけて来るわけよ。ヒゲ剃って、キメ顔した鏡の中の俺がよ。「お前は今日も最高にイケてる男だぜ」「すべての女どもはお前の手中にある。もちろん知ってるだろ?」「おいおい、その顔面晒して外出するつもりか? セクシーすぎて逮捕されるぞ」て。

【タカ】ずいぶんお喋りでポジティブシンキングな魔法の鏡だな。通販で売ってんのか?



    じっとしてるんだ

    


【トビ】惚れるよ。ホントに最近の俺はどうかしてる。男としての色気がムンムンなのよ。思わず上着を脱いじまって、上半身裸の姿になってさ。自分の男っぷりを確認するんだけど。やっぱダメだわ。どうしてもうっとりしちまう。

【タカ】鏡の前で惚けているお前の姿は容易に想像できるな。あんまり想像したくねえけど。



    声をひそめて

    我慢するんだ


        

【トビ】ま、妹がそれ見て、後ろで「キモい」って言って来るんだけどな。

【タカ】だろうな。



    しょうがないんだ

    僕は子供で

    こいつらに立ち向かえる力がないんだから

    


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