第3話
一人の男子生徒がスライムによって殺された。その数分後のことだ。
Side:主人公
その死体もそのまま残っている。この草原のどこかに、まだスライムがいると考えるとゾッとしてしまう。
「悠馬!ここにいたんだ」
「ああ、美緒か」
幼馴染の美緒と合流できた。この大勢いる中で出会うことは滅多にないだろう。
「この後どうする?」
「どうするも何も、スライムがいるからどうしようもないだろ」
「だよねー」
静まり返っていた空気が動き始める。
「ステータス」
そう誰かが口にする。聞こえてきたのは男の声だった。だが、人数が多すぎて誰の声なのか判別をつけることができない。
「おい!みんなステータスって唱えてみろよ!」
そんな声がどこかからする。
「ステータス」
その声を皮切りにステータスと叫ぶ人が現れ始める。
そういう俺も「ステータス」と唱えるのだった。
そこに現れるのは、文字通りのステータス画面だ。攻撃力、HP、スタミナ、防御力といった項目が表示されている。
「これは……」
真っ先にその文字に目が行ったが、上の方に目をやると名前、レベル、職業がわかる。
「悠馬、ステータスって唱えても大丈夫かな?」
「大丈夫、確認したから」
「ステータス」
美緒もステータスを確認している。黙々と確認をしている。
(ステータスを開くことはできたのか。……それにしても数が多いな)
現在皆が無職になっている。だが、職業欄を触ってみると、多くの職業が現れていた。最後はどのくらいまであるのだろう?そう思い、スワイプし一番下まで向かおうとしていた。
だが、その一番下にまで辿り着くことができない。ちらっと勇者の職業が見え、先着一名と書かれているのが目に入る。
(どれだけ職業があるんだ?)
「どんな職業を選ぶ?」
正直、知り合いが身近にいてくれるだけでありがたい。友人でも良かったのだが、まだ合流できておらず、どこにいるのかもわからない。
「みんな聞いてくれ!」
自ずと注目を集めることを言い始める。それを聞いて向かないものは誰もいない。今は誰か指導者が欲しいと考えていたからだ。
「今、この場所に飛ばされて、必要なものはスライムを殺す力もそうだけど。それだけじゃない。住むための家や食料も必要になってくると思う!だから、生産職と攻撃職に分けたいと思うのだけどどうかな?」
おおむね同意をしている声が響く。
(今は空気を読んで頷いている方が自然か。正直同意したくないけど)
生産職と攻撃職、どちらが最終的に生き残る?と聞かれると百人中九十人は攻撃職と答えるだろう。この二つで比べるのはそれくらい良くない。
「戦うのは嫌だから生産職に行きたいって人は手をあげて!」
その声の後、何人かの生徒が手をあげる。その割合は女子生徒が多いが、数名の男子生徒も入っているようだ。
「美緒は、あっちに行かなくてよかったの?」
ひそひそ声で話しかけた。
「うん、生き残れなさそうだし」
美緒もひそひそ声に合わして返してくる。
どうやら考えも同じだったようだ。
「生産職だけど、家を作る建築家か、農家になって欲しいのだけど。いいかな?」
今のところのリーダーがそうお願いするのなら、同意しなければいけない空気になってしまう。そのため、この人たちは木材や種がないにも関わらず、建築家と農家になる。
「今後の目標だけど、まずはスライム討伐です。そこから他の場所に移動をして、住居を増やしていきましょう」
そうリーダーはまとめるのだった。
「そういえば、あの人誰だっけ?」
横にいる美緒に問いかける。
「誰だっけな……。んー。思い出した。サッカー部のキャプテンの人」
「仲間割れがなかったらいいな……」
今のところはどうすればいいのかわからないから、このリーダーの命令に従っている。今後どうすればいいのかわかってきた時には、その人個人の考えが生まれる。命令に背く人たちが現れた時にどう対処するのかが気になる。
「皆ステータスを見てくれ————ここに職業があるだろ?このうち前衛と後衛に分かれ、四、五人のグループを組んでほしい」
周囲は少しざわめきながらも、グループを作っていく。
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