第4話


 グループで行動することで、自分たちの役割をこなすことができる。結果的に生存率が上がる良い策だ。


「って言っているけど、職業どうする?あと仲間も」

「そっちの目処は?」

「まだ。友達もどこにいるかわからないし」

「じゃあ、その友達?が来るまで一緒にいる?」

「ああ、頼む。ところでそっちの友達って?」

「優(ゆう)ちゃん」

「ですよねー」


 優ちゃん、その本名は優香と呼ばれている。お淑やかに見えるその見た目とは違い、その実態は恐ろしく凶暴だ。男子の間では、ゴリラの先祖返りとまで言われている。


「あのゴリラも今のところは役に立つな」

「へー。誰がゴリラだって……」


 その声を聞き、ギギギと錆びた金属動くかのようにゆっくりと後ろを振り向く。

「げっ」


 優ちゃん本人がそこにいる。

「ぐへっ」

 こめかみに指を食い込ませるアイアンクローがさせられる。


「呼ばれたかと思って来てみれば、お前だったのか美緒」

「そうだよ。私〜」


 そう言いながら美緒は優香に抱きつく。

「ギブッ、ギブッす姉御」

 アイアンクローをされている手を数回叩く。するとアイアンクローを止め、解放される。


「頭が潰れるかと思った……」

「さすがに潰せねえよ。潰したいけど」


 とりあえず、名前が出ていたメンバーは集まった。

「優ちゃんは……いててて」

 優ちゃんと言った瞬間アイアンクローを再度行ってくる。


「優ちゃんって呼ぶな————優香様と呼べ」

「はい、優香様!」

(このドSが)

 悪態を吐きながらも、解放されたいがために素直に従う。


「優ちゃんって結局、剣士を選んだの?」

「ああ、私にできるのはこれくらいだろうからな。二人は?」

「一応魔法使いがいいかなって考えているところ」

「美緒がそういうのなら正しいのだろうな。そっちの男の職業は?」

「男って……アイアンクローをしあった仲じゃないか。——冗談です。だから、そのあげようとしている掌を下ろして」

 ジリジリと寄ってくる優香の掌を下がりながら避ける。そのまま追いかけてくることはなく、大人しく手を下したようだ。


「一番知っているのは美緒だからなー。俺も魔法使いで行こうと思っている」

 いつ上がってくるのかわからない手を警戒しつつ、答える。



「これでグループ成立だな」

 この場から少し離れた位置に移動した。


「なんで、ここに移動したんだ?」

「称号って知ってるか?」

「ヘッドショットを決めた回数とか表示されるやつ?」

「なんだそれ?」


 悠馬はシューティングゲーム、優香は剣道、美緒はそれ以外のサブカルチャーといった形で好みが大きく離れている。そのため、例えで話をしても伝わることはない。


「何かを成し遂げたこと、裏で呼ばれているような二つ名が称号かな?」

「そう、そうなんだ」

「ってことは、称号にゴリラの先祖返りが追加された……?」


「ああ、ある」

「効果は何かあるの?称号の獲得条件とかは?他に称号を持っているとかは?称号の見方は?」


 美緒は少し興奮気味に優香を質問攻めにする。

「まあ、落ち着きな。一つずつ質問していきなよ」

「じゃあ、まず一つ目、称号の見方は?」

「自分のステータスを開いた時に間違えて横にスワイプして、気づいたんだ」


「質問、その二!」

 といったように質問攻めが始まっている。


「ステータス」

 自分のステータスを開き、どんな称号がついているのか確認してみた。そこには一つの称号が書かれているのだった。その名は——「ネタバレを踏みし者」だ。


 その文字を触ってみると、効果が表示されるのだった。ネタバレを踏みやすくなる。それだけの効果だった。


「悠馬、この効果って強いと思わない?」

「ん?ああ、ごめん聞いてなかった」

「ちゃんと聞いてよ!」

「握力が強化されるんだって!」

「よかったじゃん(よりゴリラに近づいて)」


「まあ剣を扱うのなら握力は必要だしな」

 称号の効果を少し受け入れつつあるようだ。


「美緒は自分の称号を確認してみたか?」

「いや、まだ……」

「なんかの称号を獲得しているかもだし、確認しておいた方がいいぞ。って、そんなことよりも、俺と美緒の職業をどうする?」

「魔法使いにするのは決めてたんだろ?それなら違う属性を取ればいいだろ」

「美緒は属性選んだ?」

「一応光かなー。死なないように回復魔法が取りたかったんだけど、なかったから一番可能性がある光魔法使いを選んだー」

「ってことは、俺はなんでも良さそうだな。じゃあ、風にするわ」

 職業欄にあった風魔法使いを選択した。


 職業を選択し、ステータス画面に戻ると職業欄が無職から風魔法使いに変更されている。さらに、風魔法のスキルを獲得しているのだった。

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