第2話
ガサガサと草木を分ける音がする。そこから現れるのは一匹のスライムだった。
「……スライムか?こんなの雑魚だろ」
そう言いながら男子生徒は、出会って早々スライムに殴りかかる。
だが、スライムは死なない。その男子生徒の腕に絡みつき、ゆっくり、ゆっくりと口元にまで登っていく。
「離せ、離せ!」
そう手を振り、振り離そうとしてもスライムは腕から落ちることはない。指を入れ引っ掻いたとしても、スライムの体を通り抜けつかむこともできない。
「おい、みんな見ていないで助けてくれよ!死んじまうだろ!」
どうなるのかわからない恐怖が、死を連想させる。その男子生徒は助けを乞うたが、誰も助けに来てくれない。
「え、どうする?」
「そんなことを言われても」
「先に手を出したのはあいつだしな」
そう、我先に助けようとする者はいない。皆死ぬのが怖い。だから、巻き込まれそうなところに行こうとはしない。
「誰か助けてくれ!!!」
その大きな叫び声を聞いた周囲の人間たちが物見たさで寄ってくる。
腕から登っていたスライムは、腕から肩へ、肩から首へと少しずつではあるが鼻や口を目指している。
そして、とうとう口に到達し、そのうるさい口を塞いだ。
「ポコ……、ポコ……、ポコ」
口から漏れる空気がゆっくりとスライムの体を通り抜け、空気として分散する。
「スー、スー、スースースー」
口呼吸ができなくなり、鼻呼吸に変わる。焦りや死の恐怖から、その呼吸は細かく、短い。そしてついには、その鼻もスライムで埋まる。
呼吸ができない状態になり、体が前後に揺れている。意識が朦朧としているようだ。そして、バタンと前から倒れた。
そこに勇気があるものが行き、体をひっくり返す。だが、体の下敷きになってであろうスライムの姿は確認できない。
とその時だ。その死体の食道が波打つ。
「……スライムはこの中にいるぞ!」
その勇気ある少年はそう大声を出した。周囲にいた者たちは一斉に距離をあける。その男子生徒の死体の腹部が膨らむ。そして、引き裂かれるようにして腹が開く。そこに現れたのは先ほど、体内に侵入したスライムたちだ。
「きゃー!」
「グロっ……」
その男子生徒から吹き上がる血の噴水を見て、そう口にする。
血で赤く染まり、臓物が体のいたるところに付着している。その死体から降り、ゆっくりゆっくりと移動するスライムに道を大きくあけ、様子を見る。そのスライムは茂みの中に消えていくのだった。
「なんなんだあれ?」
「あれがスライムなのか?」
「勝てるわけがないだろ、あんなやつ。みんな殺されて終わりだ」
血を見たことでの興奮、死を目の当たりにしたことの恐怖、それらが合わさり絶望へと変わっていく。
ゲームでお馴染みの最弱モンスタースライムだ。だが、ここはゲームとは違う。現実だ。その常識が本物である確証はどこにもない。
ここは現実の異世界、高校生たちの命を賭けたデスゲームが始まる。
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後書き
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