【嬌声】
声にならない声が響く。
二人で暮らすには少し手狭な
しかし住み慣れた場所。
その室内へ響く
息を吐く音と
生々しい水音
(ああ…今…俺は…)
「香澄」を全てで味わっている…。
白く透き通った肌に
細く滑らかな腕に
人とは少し違う作りの美しい脚に
翔蟲を導かせるように
舌を這わせ
赤みを増す眼前の女へと
情欲を募らせていく。
他には決して見せることのない肢体…。
他には決して聞かせることのない嬌声…。
ああ何故こんなにも美しく
ああ何故こんなにも…
(同じなのだろうか)
「っあ………」
声にならない声が響く
暖かな太陽
里の太陽
「香澄」という太陽を
侵食していく背徳感
ゆっくりと確実に
守り続けてきた純潔を
貪り喰らおうとする背徳感
涙を浮かべ
感じたことの無い違和感へ
されども愛しき違和感へ
受け入れようとする姿
浅く続く呼吸を
ゆっくりと深く長く続ける呼吸へと促し
時間をかけ
焦らず焦らせず
苦しめず苦しまず
「ヒノエ」の純潔を奪い去る。
熱く胎動する互いの性をまじまじと感じ
真に結ばれたい
その願いを叶えたのだ…。
何度も口付け
涙と汗を拭い
愛しげに視線を落とし
胎内へと入り込んだ違和感を
徐々に馴染ませ消させるように
優しく優しく
ああ…なんとも純潔を奪うということは
何故こんなにも
(幾度経験しても昂るのだろう)
目の前に居るのは
確かに確実に
「香澄」のはずなのに
あの日の
あの夜の
月が美しかったあの夜の
快楽に喘ぐあの姿の
歓びに踊り狂うあの肢体の
儚げで美しいあの肉体を
何故重ねてしまうのか
何故こんなにも同じなのか
どうしようもない
どうしてだろうな
(桔梗…)
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