【渇望】

 夜が明けるのが遅い。

 浅ましい己を恥じ

 禊を込めて水を浴び

 寝床へ着いたはずなのに


「何故寝れないのだろう」


 二人で過ごした家

 二人で過ごした部屋


 その片割れはここに無く

 もはや帰ることも無く


 そして今頃は…。


(あの人の腕に包まれながら…女の歓びを知っている頃なのだろう)


 おぞましい

 浅ましい


 いつまでもいつまでも


 あの夜のことが忘れられない

 戯れだろうと

 気まぐれだろうと


 あの日あの夜

 確かに選ばれたのは


 私なのだ。

「香澄」ではない私


 至高の快楽を知って

 愛しさを知って


 浅ましさと

 嫌らしさを知ってしまった。


 あの熱く

 けれど短く深い夜を


 双子だから

 亜人だから


 この胸に否が応でも響く


 昂る最愛の姉の

 姉ではなく女の歓び。


 ああ…夜が長い…。


 いつまでもいつまでも

 いつまでもいつまでも


 続いていきそうな


 いっそ消えてしまえれば


 こんなにも苦しくならずに済むのに


 嫌ってしまえば


 こんなにも苦しくならずに済むのに


「嫌いになれるはずがない」


 心から愛しているのだ

 あの人のことも

「香澄」のことも


 知られたくない感情に蓋をすることなど

 ずっとずっと慣れている。


 姉には知られたくないから

 知ってほしくないから…。


「浅ましい…」


 遠くから伝わる劣情に


 私は自らを

 自らで慰めることしか出来ないのだ…。

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