第9話 異端で異質(三人称)
今回短いです。
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「——これが、今回の実技試験の映像です」
会議室のプロジェクターで『剣司VS雷久保&内海』とメモされた映像を見せ終えた慧一郎は、形式としてそう告げつつも返事はないだろうことを悟っていた。
なぜなら、自身が提出した映像は、とても驚きなしでは見られないと慧一郎自らが思っていたからである。
「…………」
そして、この場に集まった者からは実際に返事をしなかった。唖然としていた。
——異能捜査課の課長が、である。
本来ならば、一つの課を総括するトップ達がこうも動揺してはならない。
だが今回ばかりは例外だな、慧一郎は内心肩を竦めた。
(何せ、既に異能捜査課の中でも上位に食い込むレベルの実力を持った雷久保と内海を軽くあしらったんだ。驚かねぇ方が無理ってもんだ。しかも——ウチの特別製のカメラでさえギリギリな部分が二つもあるときた。そんなの初めてのことだしな)
異能捜査課のカメラは、被写体の速度が光速に迫るレベルまで収めることができる特別製のとびっきり高性能なカメラだ。
ところが、剣司が二体の騎士を斬った部分とラストの部分だけは完璧に動きを捉えることが出来なかったのである。簡単に言えば、腕や刀がブレて映っていた、ということだ。
つまり——剣司の身体は光速に近い速度で動いているということになる。
人間が光速で動くなど、絶対にあり得ない。
仮に光速で動こうものなら、肉体は負荷に耐え切れず粉微塵となる。
(——はずなんだがなぁ……)
慧一郎は呆れとも感嘆ともいえる息を漏らした。
そして、いい加減黙ったままな上司を現実に戻すべく口を開いた。
「課長、いかがでしたか?」
「…………これは、真実なのか? 今流行りのフェイク動画——」
「私がこの場でそんな命知らずな真似をするとでも?」
「——なわけがない、か……」
四十代過ぎの目と頬に傷のある男——異能捜査課課長の
「村正剣司、と言ったか……この前も報告にあった名前だな」
「ええ、私がしました。一年もの間剣神ノ鳥居の中に消え、つい先日——剣神ノ鳥居に張られた結界の破壊と共に突如として戻ってきた無能力者の青年です」
「そうか。……どうせ私とお前しかおらんのだ。その口調……やめないか? お前に敬語を使われるとか、ムズムズして仕方ないんだが」
なんて聡に顰めっ面と共に指摘された慧一郎は、一瞬目を瞬かせたのち……大きなため息を吐いた。
「はぁ……いい加減慣れろっつってんだろ、聡。お前はもう課長なんだぞ」
「慣れないものは慣れんのだ。それに、私と慧一郎は同期。一時期はバディも組んでいた仲だろう?」
「分かった、次からはタメ口で話すから、話を脱線させるのはやめてくれ。相変わらず口数が多いんだよお前は」
同期である慧一郎に責めるような目で見つめられた上に注意までされると、聡も流石に謝らざるを得なかった。
すまんすまん、と後頭部をかいたのち——真剣な面持ちに戻る。
「慧一郎の望み通り話を戻すが……お前から見て、彼はどうだ?」
「そうだな……」
慧一郎は顎に手をやって考える素振りを見せると、ゆっくりと語り始める。
「まず、鬼人と試験から実力は言うまでもねぇな。仮に俺が戦えば、一刀の内に死んじまうだろうよ」
「お前がそこまで言うか……異能捜査課でも指折りの強者のお前が」
そう難しい顔で呟く聡に、慧一郎は一瞬キョトンとしたかと思えば——いきなり笑い出した。
「ハハハハハハッ! アイツはそんな次元じゃねぇよ。俺なんか、アイツに比べれば路傍の石も同然だろうな!」
「どう考えても笑うところではないだろう!? この者が仮にあの者のように離反したどうする!?」
「そん時は大人しく死ぬしかねぇな。タバコくらい吸わせろって頼んでみるかね」
最後の晩餐ならぬ最後の一服だ、とあっけらかんと宣う慧一郎の姿に聡は思わず頭を抱えたくなるが……なんとか耐えて話を続けた。
「……なら、次元の違う強さを持った彼奴が無能力者というのは本当なのか? この映像を見る限り……どう考えても無能力者の動きではないぞ?」
「あぁそうだな、俺も信じられねぇ。だが——事実だ。実際、二回くらいアイツの戦いを俺の【
と、聡に同情するような声色で語りつつ肩を竦める。
元バディとして慧一郎の目に関しては誰よりも信頼している聡は、慧一郎が本当のことを言っていると悟り、唖然とした様子で声を漏らした。
「——一体、彼は何者なのだ……?」
その問いに答える者はいなかった。
——一方その頃。
「——せ、先生! 大変です! 緊急事態です!!」
「なんだね急に!? 今僕が診察中なのが見て分からんかね!?」
とある病院の一角にて。
「——彼女が……昨日運ばれてきた鬼人の元被験者が目を覚ましました!!」
一つの大きな歯車が、動き出そうとしていた——。
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