第4話 新たな杖とエラの《魔術》
「はぁ〜」
「どうしたんですかイーラルさん?さっきからずっとため息ばかり吐いて。」
「安物で昔から使っていたとはいえ、魔術の要である杖が折れてしまって、どうするか悩んでいるんだよ」
「新しいのを買うのはダメなんですか?」
「いくら王都でもな、金があっても、オレみたいな役立たずの魔術師の最下位である召喚術師用の杖なんて売ってないんだよ。それだけ召喚術師が底辺に見られているんだ。」
「そういえば、この街に来る途中で野宿も想定して薪用に結構な量の木材を採取してありますしそれに石ころから高濃度の魔鉱石を《変化》で最高材質の素材にして僕が作りましょうか?」
「いいのか?けど召喚術師の杖はな新しく作り直すと契約した存在との契約破棄になってまた新しく契約し直すしか無いんだよ。だから直せるなら直して欲しいんだけどな。欲張らないし頼むよ」
「折れた杖、まだ残ってます?」
「ああ一応は残してあるよ。野営する際の薪の一つにはなると思ってな」
「ならそれもください。それと僕の《変化》を見られたく無いんで何処か人気がない場所ってないですかね」
「そうだな。ならやっぱり宿屋の中でやるのがいいだろう。部屋には鍵をかけておけば物理的には見る事は出来ないからな。それに使い魔で見られる心配もないしな。召喚術はとにかく底辺だから使う奴なんて殆どいない。だから問題ないはずだ。」
「じゃあ宿屋で作る事にしましょう。」
そう言って僕はイーラルさんと一緒に宿屋に部屋をとってただの木材をこの世界で最高の木材の素材であるトレルの木材に《変化》させて更にそこら辺で拾った石を沢山の高濃度の魔鉱石に《変化》させた。そしてイーラルさんの杖を中枢に《変化》を発動させた。すると紫色に輝く魔鉱石が杖の先端に埋め込まれ杖の全体に魔鉱石の魔力が流れ今までイーラルさんが使っていた杖と似た感じだが洗練された杖が生まれた。
「はい、完成です。イーラルさんが契約していた状態の杖のまま新しく作り直せたので契約も破棄されていないでしょうしより強い術式を使える筈です。それとおまけで僕が召喚術式を独自解釈して扱った召喚魔術に限り記録されていった術式は扱える様になったみたいです。」
「本当にありがとうなエラ。っていうかその能力強すぎだろ。それとお前は若しかしたら固有魔術の使い手かもしれないな」
「固有魔術っていうとその人しか使い手何いないオリジナルの魔術で技量があれば誰でも使えるのが汎用魔術でしたっけ?」
「そうだよ、固有魔術なんて扱えるのは天才ばかりだ。まぁ中には殆どの人がが技量さえあれば使えるところまで落とし込んだ汎用魔術の方が優れているって言う変わり者がいたけどな。それでその固有魔術はなんていう名前にするんだ?」
「《領域》って名前にしようかと思います」
「因みに由来とか術式内容は」
「僕が望んだ事を再現や模倣、実現するのが術式内容です。由来はそれを扱える範囲が決まっているからです。」
「扱える範囲?それ以外にも何かデメリットとかあるのか?」
「範囲は僕が視認出来る範囲で対象は選ぶ事が出来ます。ですが無制限ではないのが一つ目のデメリットです。二つ目は自分に制限を掛けないと複数の術式を模倣できないし魔法する術式は増える程に僕の記憶に依存してしまう為ランダムに何らかの形で領域内に存在してそれはその形になった物を手にしないと術式を利用できない点です。但ししっかりと記憶されている術式に関してはそれを省略して模倣出来ます。そして三つ目、これは使うと暫くは次までにインターバルを必要とする事。これは《領域》によって体内の魔力機関が一時的に混乱してしまうからです。自身の術式ではなく模倣している為、身体全体に負荷と混乱状態になる為その間は全ての魔術が使用できません。つまり大きな隙になります。まぁ近接戦さえ出来ればある程度は問題ないですけど。」
「三つ目に関してはかなり大きなデメリットだな。使い方を間違えたら普通に死ぬぞ。」
「そうですね。だからある程度は近接戦で相手の力を削ぐか一気に決定打になる術式を使って相手を倒すか、最後の切り札として残しておくか。使い方を考えさせられる固有魔術ですね。」
そう言ってイーラルとエラは術式について話しながらその日を過ごした。
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