第13話

 合否発表の夜は軽い晩餐会が開かれた。

 いつもの料理をちょっと豪華して少し着飾ったぐらいだが、好きな物を好きなだけ食べてよいということで、気分は高級レストランビュッフェである。いやっふー!


 そして最初から結構な量を作って、余りを使用人たちに下賜するお裾分け二次会が開かれるので、メイドや執事を筆頭に料理人もずいぶんと気合が入っている。

 メイド達は主に俺の腹をさっさといっぱいにさせて早く二次会を開きたい方向にだが。

 ふふ、俺に胃袋が異次元だってことを思い知らせてやる・・・とイキったものの、所詮十歳児のおなかに入る分量などたかが知れている。


「あー、もう食べられない~」

「ふふ、お嬢様、意外と早いギブアップでしたな?」と料理長から声を掛けられる。

「だってメイドさん達、完全に私の好みを把握してて、絶妙に食べやすい分量を持ってくるんだもの」

「じゃあこちらの特別デザートはお下げしましょうか?」

「デザートは別腹!」


 慌てて料理長を引き留めて、テーブルに置いてもらう。

 豪華なケーキの上に飴細工の装飾がおもちゃの王冠を模していて、可愛くもおちゃめな作品だった。


「お嬢様、改めて合格おめでとうございます。」

「ありがとう、料理長。今まであなた達のおいしい料理でここまで育ちました。まだこの先も弟のリースと共によろしくお願いします」「おねがいしまふ~」

 続いたのは弟のリースだ。名前を呼ばれたから反応したのだろう。


「こちらこそ、お嬢様方に喜んだいただけるなら、これほどの幸せはありません。これからも精進してまいります」「まいりまふ~」

 ふふっとついみんなで笑ってしまう。でも料理長は涙目で泣き笑いだった。


 こうして晩餐会は終わり部屋へ戻った。今頃は二次会に突入しているだろう。二次会の時間帯は各自部屋に引きこもり、使用人の世話はいらないとしている。

 あまり羽目は外さないとは思うが、毎回必ず翌日にお休みを取る人が数人でるので、存分に楽しんで貰っていることは間違いないようだ。


 ちなみに母様から祝いとして例のミスリルシルクを使った一式をプレゼントしてもらった。

 待ってました!これで学園生活が快適になる。ちなみにスパッツは無理を言って黒に染めてもらいました。というか闇属性の力が必要だったので俺も手伝った。


部屋で母様のプレゼントをチェックしながら、途中でうつらうつらとしていると、不意にノックがあり意識が急覚醒する。


「どうぞ」

「夜分に悪いね。今日の晩餐会は楽しんでもらえたかい?」

「はい、父様。とても楽しい催し、ありがとうございました」

「それで学院のことでいくつか気にしておいて欲しいこととお願いがあるんだ」

「なんでしょう?」


「まずアディは最上位のAクラスになる。一クラス二十人構成だ。心配はしてないけど、これは一年ごとに見直されるのでAクラスに留まれるように。また王子とエルフの留学生三人も同じクラスになる」

「それは忖度的な?」

「いや完全に実力だ。担任も実力主義で公平な人物に決まっているので、そこは安心していい。あとAクラスには平民で特待生の女の子が一人入る」

「それはすごいですね」


「ああ、才能と努力の結果だろう。それでお願いなんだが、そのエルフの留学生と平民の子が孤立しないように気を配ってあげて欲しい」

「エルフの子達はもともとお友達作戦があったので既定路線かと思いますが、平民の子はどうしてですか?」


「うーん、ちょっと一言では言えない事情というかどれも憶測の域を出ない情報があって。とりあえずリーゼ家で囲っておきたいんだ。だからアディは普通に友達になってくれればいいよ」

「そういうことなら分かりました。バッチリお友達になってきます!」と敬礼する。


「ふふ、ありがとう。でも敬礼は右手でするものだよ。くくっ」

「はぅ、ごめんなさい」

「うん。ではおやすみ。良い夢を」

「父様も。おやすみなさい」

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