第12話
一週間が経ち、合否発表の日。私はヴァルター兄様の出仕というか登校の馬車に便乗させてもらい、一緒に発表を見ることに。
まだ早い時間だったが、ちょうど張り出されるところだった。
「やりました!兄様!合格です!」
「まぁ当然だが、今までよく頑張ったな」
めずらしく兄様が頭を撫でてくれる。
「クラス分けはまた入学式当日に張り出されるから、しっかり確認しておくんだぞ。また席順はクラス内に張り出されるはずだ。入学式は受験番号が椅子に貼られているし案内もあるから迷うことはないだろう。それはそれとして他にも確認しておくことがあるんじゃないか?」
「ほぇー。あ、首席はやっぱり王子様ですよ。アルス様っていうんだー」
「おい、まさか知らなかったのか?」
「いやいやまさか。ちょっと何番目が誰かごちゃついただけですよ」
俺が分かったのは「アルス・シエルラーサ」とファミリーネームが国名だったからだ。
「それを知らないと言うんだ。他には?」
「えーと、合格者が百人で、不合格者が……え!?同じぐらいいますね」
「そうだ魔術学院は意外と狭き門なんだよ。といっても例年の合格者は八十人程度だし、不合格者もこんなに多くない。おそらく王子様効果と記念受験だな」
ふーん、どこの世界も同じようなことが起こるのね。
ちなみに学術学院と騎士学校は受験人数も合格人数ももっと多いらしい。またこの二つは王都以外の各地域にも存在する。
魔術学院だけが特殊なのだ。地方にも文官や商人や騎士、兵士など人手は必要だしね。
ただ魔術学院に限らずだが、卒業生が私塾を開いたり個人で教えたりすることを禁止していないので、地方でも魔法教室というのがあったりして、平民でも魔法を使える者は多い。
冒険者や傭兵などは言わずもがなだ。
ではなぜ王都の各学校に人が集まるのかというと、初等部の上にある研究科や騎士団下部組織を卒科すれば、王都の公務員になれる確率がとても高くなるからだ。当然地方より待遇もよい。
まぁ儲かっている地方には例外もあるけど(リーゼ家みたいに)。
ただ総合的に考えるとやはり王都の方が、安心安全安定した就職先ということで人気だ。
あと王立である故、学費と制服などの標準装備品が無料支給というのもある。また平民に対しての救助策として特待生制度が設けられている。
合否発表後から受付されており、いつでも申請が可能だ。特待生には消耗品を買うお金から、その子の勤労収入が途絶える分の家計の援助までと、個人の状況により幅広く援助の内容が変わる。
ただし毎年審査が行われるので、それなりの成績も残す必要があり、幅広く潤沢な援助ではあるが、その分審査も厳しいらしい。
俺も成績的にはもちろん特待生制度を申請できるのだが、貴族家は基本的に特待生申請はせず、逆に寄付を行うのが通例だ。
別に寄付をするしないで何かが変わる訳ではないが、表の顔のノブレス・オブリージュというヤツである。
これが平民の特待生制度への一助となるなら、めずらしく真っ当なノブレス・オブリージュと言えるだろう。
毎年多額の寄付を行う侯爵家としても気分が良い。
「さて、見る物は見たし行くか」
「はい、兄様」
ヴァルター兄様は魔術学院研究科に所属しながら、たまに父の仕事を手伝っている。今日は学院の方なので出仕ではなく登校ということになる。
そして兄様を降ろした後、俺はそのまま王都のリーゼ邸宅に取って返すというわけだ。
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