第11話
自分の試験も終了したので、さっさ帰路に着くことにした。正直言うと
どうしても知りたいなら、下位の者や密偵に情報を集めさせるのだ。本人が動くことをしてはならない。って母様から学んだ。
まぁあれだけの騒ぎならヴァルター兄様か父様の耳に入るだろうし、必要なことなら教えてくれるでしょ。
今日の夕食会の話題は当然俺の試験のことになった。受かったことには誰も疑いを持っていないが、どのくらいできたのかとか根掘り葉掘り聞かれた。
「筆記試験はほぼ満点だと思うので大丈夫だと思います。属性鑑定も予定通り光と闇の隠蔽に成功して五属性となり、ちょっと騒がれたくらいで事なきを得ました」
みんな「うん、うん」と安心して頷いている。
「魔法実技は?」
唯一疑わし気な顔をしていたヴァルター兄様が聞いてくる。
「フレアランスを使いました」
「「「え?」」」
皆の表情が変わる。
「まさか全力で?」
「いえ、出来る限り圧縮収束して、的の真ん中を貫きました。ちょっと防魔土嚢に刺さりましたけど」
「刺さったというか、貫きかけたと聞いているが?」
ヴァルター兄様なぜそれを!?プライバシーさん早く帰ってきて!
おそらく試験官やお手伝いには研究科の生徒も駆り出されているので、すでに知人から詳細を聞いているのだろう。
「あ~、近くまで行って見てないので詳細は分かりかねますが、試験官の方がちょっと慌てて土嚢の後ろを確認しには行ってました。結果大丈夫だったみたいです」
「それを貫きかけたというんだ。そもそも中級魔法のフレアランスではなく、なぜ初級魔法にしなかった?」
「えーと、コントロールを見せつけつつ、綺麗に的を破壊っていうのが採点基準だと判断しましたので。それに他にも中級魔法使って防魔土嚢にぶつけてた子もいましたし」
「三、四属性持ちと全属性持ちの中級魔法は魔力量に差がありすぎて、威力が比べ物にならない。それに圧縮収束で魔力足してるから、それほぼ上級魔法だぞ。ああいうのは初級魔法の多重展開で的を破壊すればいいんだ。いつも見せてるだろう?」
「まねっこはなんかやだなぁって……」
「こいつは……」
ヴァルター兄様が頭を抱える
「でもでも、防魔土嚢が吹き飛ぶくらい派手に上級魔法を放っていた子もいましたよ!」
「あーそれなぁ。試験官が魔法バカの脳筋で、「今のお前の最高を見せてみろ」って派手に煽ったらしい、ってお前現場にいたのか?」
「いえ、急に辺りが光って轟音と共に土嚢が吹き飛んでいくのを遠目に見かけました」
「見には行かなかったのか?」
「さすがに野次馬に混じるのはどうかと思いまして」
「あら、成長したのねアディちゃん。お母さん嬉しいわ」
母様が褒めてくれた。嬉しい!
「えへへ。でもヴァルター兄様、あれって誰だったんですか?王子様は最初の方のはずだし、属性鑑定の時も王子様以外の時に結構騒ぎになっていたりして、ちょっと雰囲気が変でした。」
「いやお前、それ現地に居て何で調べてないの?」
「へ?だって自ら動くのは下策だって教わったし、他人の属性にはあまり興味なかったし」
「アディちゃん……」
ああっ母様が残念な子を見る目にぃ!
「アディちゃん、そうときはお友達を使うのよ」
「え、いや私、入学試験会場にお友達なんていませんし、誰も話しかけてきませんでしたし」
「入学試験は、まだ学院内扱いではないから下位の貴族から上位の貴族に話しかけることはないわ。だからあなたから積極的に話しかけて動いてくれるオトモダチを作らないといけなかったのよ」
オトモダチ。貴族社会こえー!下位の上位のは知ってたけど、侯爵と公爵と王族以外からは話しかけられなくてラクチンだわーぐらいにしか思ってなかったし、入学試験がまだ学院外扱いっていうのも知らなかった。
っていうか周りをよく見てれば分かったはずか。やっぱ寝坊した余韻で平静ではなかったのかもなぁ。うぅ反省。
「とりあえず上級魔法を使った子や属性鑑定で騒ぎになった件については、入学後に自分で調べてみなさい。これも社交の練習のうちよ」
「はぁい……」
一週間後に合否発表、さらにその一カ月後に入学式&授業開始だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます