第3話

 リーゼ家の幼児教育はとてもしっかりしていて、それこそゼロ歳のころから知育的な遊びが織り交ぜられていたし、母親を筆頭として家族とのふれあいも多いし、興味を示したものについては極力遠ざけないようにしてくれた。

 四歳のころからは、近所の子持ちのご婦人たちがお茶会と称して集まり、同年代の子供達が遊ぶ機会も多く開かれた。子供達の方は基本無礼講なので、かなりカオスだったけどな。楽しくないわけではなかったけど。


 ただ六歳になったぐらいから少し様相が変わった。「お勉強」の時間ができたのだ。これは専門の教師による授業が行われる。といっても外部のカヴァネスやチューターではなくメイドさんが担当するのだが。ウチのメイドさんたち超優秀。

 小学校の教室に教師一人、子供一人みたいな状況になっている構図がイメージしやすいだろうか。遊びを通した学びも続くのだが、やはりこういう「お勉強」という形式になるとちょっと雰囲気というか求められるものが違う。


 ちなみに歴史学などは結構詰め込み式だったりする。いや分かってるんだ、仕方ないんだ。こういうのはまずは暗記するしかない。救いがあるとすれば、最近は小競り合い程度は起こるが、どこもそれなりに平和のようで国王の名前が頻繁に変わったりしてないことか。同じような名前がたくさん並ぶとマジでつらいからなぁ。


 あと魔法!ついに魔術学の勉強ができることになりました。きゃっほう!

 魔術学院を目指す子供は、通常はまず属性鑑定を教会で行うのだが、リーゼ家では代々自分の家で行うのが慣習になっている。何故かというと多属性の子供が生まれやすいのだ。


 この世界の魔法属性は基本的に地風水火光闇無となっている。もちろん属性建てするほど体系的な魔法が存在しない氷や雷なんて魔法も雑多にあるが、基本七属性となっている。そしてほとんどの人は複数属性なのだが、多くても四属性だ。


 直近でもお祖父じい様が六属性持ちで大騒ぎになったとか。そのため、お祖父様は無用な軋轢あつれきを嫌い、魔術学院ではなく騎士学校を選んだ。魔力が属性数の割に高くなかったせいもあるらしいが、それでも大暴れした伝説がいくつも残っているそうだ。最終的には騎士団長にも就いていたらしいし。

 まあ騎士として鍛えたおかげで、今も孫に稽古をつけるぐらいには元気にしているので、選択としてはよかったのだろう。


 ちなみにお祖父様は当主を引退した後は自領の代官達を取りまとめる仕事をしているので、年の半分以上は侯爵領にいる。

 これは本来当主たる父様の仕事だが、父様は王城に官僚としてのお役目を授かっているので、代わりにお願いしているという状態だ。


 もちろん信頼できる部下に任せてもいいのだが、お祖父様自身が体が鈍ると自分から手を挙げたのと、少し特殊な事情があり任せるに至った。

 また兄様たちの学校などもあるので、お祖父様とお祖母様を除いた家族は、長期休暇以外は王都の侯爵邸に居ついている形となっている。


 そして俺の属性だが、なんと全属性。神様ありがとう!今だけ感謝するよ!でもおちんちん無くした代わりだったら許さんぞ?

 ただ家族は頭を抱えた。そりゃ当然か。全属性は歴史上でもめったに存在しないらしい。これが王族ならさほど問題ないらしいが、侯爵家クラスでも結構、いやかなり問題になるらしい。


 長時間に渡る家族会議の結果、隠蔽することが決まった。

 言わなきゃばれない、使わなきゃばれないというやつだ。さらに文字通り隠蔽する「隠蔽魔法」を習得することが決まった。この世界は鑑定魔法もあるからね。

 これは一般的に存在すら知られていない魔法だが、以前当時のお祖父様達も何かないかと探し回ったところ、リーゼ家秘伝の古い魔法書に隠蔽魔法の実在が記述されていた。ただこれの習得は全属性が前提だったので、お祖父様の時は役に立たなかった。


 というわけで最終的に家族全員一致(俺に選択権はない)で新たに魔術学の詰め込みスパルタブートキャンプがお勉強として決まったのであった。

 やっぱこの世界の神様、ろくなことしねーな。

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