第2話

 しばらく経ち、俺は三歳を迎えた。髪の色は赤茶寄りのキャラメルブロンドだ。幼児期は色素が薄いはずだから、成長したらほぼ茶髪になるのではないかなぁ。瞳は翠色だ。さすが異世界。


 さて日本でいうと幼稚園に入ろうかという時期だが、この世界では十歳から学校機関の初等部に通うのが通例のようで、保育園や幼稚園といった施設は存在しないらしい。ご近所でまとめて面倒を見るとか、そういった習慣がある地域もあるが、それも様々だ。

 また十歳からということは、つまり基礎的な学習は家などでやってから来なさいねということで、それを考えるとそれなりに敷居の高いものとなっている。


 もちろん義務教育とかいう制度はないので、学校に通わない平民の子供も多い。ただし貴族は必須だ。義務はないが、通わない場合は何かしらの瑕疵かしがあると見なされる。


 ちなみに学校の種類は、王立学術学院、王立騎士学校、王立魔術学院の三つとなっている。なぜ騎士学校以外が「院」なのかというと、初等部の上に研究科があり、更なる高みを目指して学ぶ組織があるからだ。

 騎士学校生の多くは卒業後に希望すれば、王国騎士団の下部組織に騎士見習いとして所属することになる。

 初等部が日本の小中学校、研究科などが高校・大学と考えてもらえば分かりやすいだろうか。

 学術学院は筆記試験のみだが、騎士学校は体力テスト、魔術学院は魔法の実技試験が加わる。


 自室で何年も先のことについて物思いにふけっていると、ドアがノックされ「失礼します」とメイドがドアを開け、母様、アリス・リーゼが入ってくる。

 そうウチはリーゼ侯爵家なのだ。

「アディちゃーん、今日は何して遊びましょうかね~」

「ままー」

 俺は転ばないように気を付けながら駆け寄って抱き上げてもらう。


 元成人男性がどうしたって?いやもう年齢っていうか、身体にどうしようもなく引っ張られるんだよ、精神や感情が。だからまま呼びもぱぱ呼びも甘えるのにも何の抵抗感もない。そもそもまだ舌足らずだしな。


 母様はこうやってよく遊びに来てくれる。父様も意外と来るんだが、執務官によく引っ張られて帰るので仕事は結構忙しいようだ。

 他に家族は兄が三人、祖母と祖父はいるが同じ王都にある別宅住まい。行き来はよくしている。というか兄様達が鍛錬や手伝いによく駆り出されているようだ。ただ両親の仲睦まじさと見てると弟か妹がもう一人ぐらい増えそうだけどね。


「アディちゃん、今日はご本を読みましょうか?」

「まほーちゅかいのほんがいいー」

「あらあら、アディちゃんは本当に魔法が好きねぇ」

「ちゅきー」

 だってファンタジー世界だぜ。魔法使わなきゃ嘘だろ。

「デリックもケアリーも、もう少し魔法に興味を持ってくれれば良かったのだけれども」


 デリックは二番目の兄様で十歳。騎士学校在学中。ケアリーは三番目の兄様で七歳。学術学院を目指しているそうだ。二人とも魔法の才が無いわけではない。そもそもリーゼ家は魔術系の官僚だし、父様も母様も優秀だ。

 ついでに言うと一番上の兄様はヴァルターで一二歳。魔術学院在学中。

 上の兄様二人とはそんなに遊ぶ機会はないが(興味はあるもののどう扱っていいかよく分からないらしい)、一番下の兄様はよくご本を優しく読んでくれるので大好きだ。もうちょっと育って丈夫になったら、他の兄様達にも構ってもらおうっと。

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