第三章 もう一人の自分

悠真は凍りついた。

“佐原”という名を呼ばれたのは、生まれて初めてではなかった。

幼少期、祖母から何度も言われていた。

「あんたね、昔死んだ子と同じ名前なのよ。

でもね、あの子……まだ帰ってきてないの。」

――まさか。

旧校舎の失踪事件の被害者、

“佐原悠真”という生徒。

それは、彼と同じ誕生日、同じ顔立ちの少年だった。

まるで、“もう一人の自分”。

パソコンの画面が揺れる。

映像が勝手に再生される。

そこに映っていたのは、

教室の黒板の前に立つ自分――

でも、どこか違う。

映像の中の“悠真”は微笑んで、チョークで書いた。

「返して」

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