マジックバッグの中の人。救いの女神おじさんの倉庫整理術

 三十路手前のDランク冒険者・レジナルド。彼がスカウトされたブロード商会の主力商品は、異世界ものではおなじみの「マジックバッグ」だった。落ちこぼれ冒険者が、これまでに培った経験と倉庫整理のノウハウを武器に、人助けに奔走するお仕事ファンタジーです。

 冒険者としては鳴かず飛ばずだったレジナルドが、裏方に転職して得ていく仕事の手応えと、充実感が心地良いんですよ。

 若き女性経営者ベルが営むブロード商会のマジックバッグは、異空間ゲートを通じてゴーレムたちが荷物を出し入れする魔法の物流倉庫だった。しかし内部では動線が衝突して、荷物は大渋滞。そんな混沌とした現場に配属されたレジナルドが、倉庫内の動線を整理し、停滞していた物流を一気に改善。さらに元冒険者としての経験を活かし、マジックバッグを通して冒険者に救援物資を迅速に届ける新たなビジネスモデルを提案し、冒険者たちを陰ながら救っていくんです。

 やがて「ブロード商会のマジックバッグには、救いの女神(おじさん)が宿っている」という評判が冒険者に広まり、商会の業績は右肩上がりに。派手な活躍はなくとも、自分の仕事が人々を救い、世の中の役に立っている。仕事の実感が自分の誇りに変わっていく姿に心が浮き立ちます。縁の下で社会を支える裏方の人々へ、「ありがとう」と感謝したくなりました。


(「エンジョイワーク!」4選/文=愛咲優詩)