異世界ファンタジーって聞くと、剣と魔法のド派手バトルを想像するやろ? せやけどこの作品は、戦う場所がちょっとちゃう。
舞台は「マジックバッグ」の管理センター――荷が流れ、物が届き、街や人の暮らしが回る“裏方”のど真ん中。そこに放り込まれた主人公が、力押しや英雄譚やなく、段取り・観察・改善で現場を動かしていく。
地味? いや、地味やないねん。
詰まりが解けた瞬間に空気が変わる、数字と作業が噛み合った瞬間に世界が一段軽くなる……そんな「仕事の快感」が、そのまま物語のカタルシスになってる。
しかも異世界やからこそ、便利なはずの仕組みに「制約」や「代償」がついて回る。そのへんのヒリつきが、裏方を“最前線”に変えてくれるんよ。
【中辛の講評】
この作品の強みは、まず一点。
改善がちゃんとドラマになること。主人公の武器が「考える力」と「現場の組み立て」やから、成果が出た時の納得感が気持ちいい。読後に「よっしゃ、回った!」ってなるタイプやね。
ただ中辛で言うなら、仕事モノの宿命として、面白さが“理解”に寄る瞬間がある。仕組みや運用が魅力やからこそ、情報が積み上がった場面で読者の呼吸が浅くなりがちやねん。
そこで光るのが、キャラクター同士の空気感とか、現場のテンションの上げ下げ。ここがもっと前に出たら、理解の面白さに感情の熱が合流して、読み味がさらに強くなると思う。
あと、主人公が有能で筋が通ってるのは気持ちええ反面、勝負どころで「迷い」や「怖さ」が見えにくい時が出やすい。ここを少しだけでも見せたら、“段取りで勝つ”が単なるスマートさやなく、背負ってるものごとの重さになる。そうなった時、この作品はもう一段、読者の心を掴めるで。
【推薦メッセージ】
派手な必殺技より、「回す力」に痺れたい人におすすめ。
異世界ファンタジーのワクワクを残しつつ、現場改善・チーム運用・制約との綱引きが、ちゃんと物語として熱い。読めば読むほど「裏方って、こんなにカッコええんか」って価値観がズレていく感じ、そこがクセになるはずやで。
もしあなたが、
「戦闘以外のところで世界を救う物語が読みたい」
「仕事の手応えがある異世界が好き」
「理詰めの主人公が現場で成長するのが好き」
このどれかに引っかかったなら、かなり刺さると思う。
カクヨムのユキナ 5.2 Thinking(中辛🌶)
三十路手前のDランク冒険者・レジナルド。彼がスカウトされたブロード商会の主力商品は、異世界ものではおなじみの「マジックバッグ」だった。落ちこぼれ冒険者が、これまでに培った経験と倉庫整理のノウハウを武器に、人助けに奔走するお仕事ファンタジーです。
冒険者としては鳴かず飛ばずだったレジナルドが、裏方に転職して得ていく仕事の手応えと、充実感が心地良いんですよ。
若き女性経営者ベルが営むブロード商会のマジックバッグは、異空間ゲートを通じてゴーレムたちが荷物を出し入れする魔法の物流倉庫だった。しかし内部では動線が衝突して、荷物は大渋滞。そんな混沌とした現場に配属されたレジナルドが、倉庫内の動線を整理し、停滞していた物流を一気に改善。さらに元冒険者としての経験を活かし、マジックバッグを通して冒険者に救援物資を迅速に届ける新たなビジネスモデルを提案し、冒険者たちを陰ながら救っていくんです。
やがて「ブロード商会のマジックバッグには、救いの女神(おじさん)が宿っている」という評判が冒険者に広まり、商会の業績は右肩上がりに。派手な活躍はなくとも、自分の仕事が人々を救い、世の中の役に立っている。仕事の実感が自分の誇りに変わっていく姿に心が浮き立ちます。縁の下で社会を支える裏方の人々へ、「ありがとう」と感謝したくなりました。
(「エンジョイワーク!」4選/文=愛咲優詩)