第2話 最後の自慰行為

昼食後、艦内にいる全員が整列させられた。

一段高い場所から艦長が現れ、深刻な表情を浮かべた。

ハンスを含む乗組員はまじまじと見つめていた。

続いて、艦長が口を開く。

「諸君らにとって残念な知らせがある」

"残念な知らせ"と聞いた途端、皆が俯いた。

なぜならこの艦長は、ちょっとヤバい時には"悪い知らせ"と言い、本当にヤバい時だけ"残念な知らせ"と言うからだ。

「今朝、我艦に向かっていた輸送宇宙船3隻の内、一隻が破壊された。生還した2隻は食糧や燃料、弾薬などを運んでいたのだが...。破壊された一隻はコンドームやピストンなどを含む性処理用具を運んでいた。単刀直入に言うと、自慰行為を出来るのは今日が最後になるかもしれない」

決してふざけてなどいないのだ。

愛する者とも会えないなか、唯一自分への愛情を満たせる物、それが消え失せたのだ。

「Nooooooooooooooooooo!!!!!!!!」

「What The Fuuuuuuuuck!!!!!!!!」

と、泣き叫ぶ者まで現れた。


その後、全員が一列に並び、1人づつコンドームとエロ本、タバコを受け取る。

しかし、ハンスはタバコ以外受け取らなかった。

「俺はいらない」

「え?本当に良いのか?ハンス」

サッチは不思議そうな顔で見つめる。

「これが最後かもしれないと思うと、本当に次の出撃で死んでしまいそうな気がする」

そう言うと、ハンスは部屋に戻ってしまった。

ハンスの姿が消えた後、サブゾーとサッチは顔を見合わせた。

サブゾーは少し迷ったが、コンドームを箱の中へ戻し、ハンス同様タバコだけを持って去っていった。

「ラッキーーーーー!!」

ハンスとサブゾーが受け取らなかった分のコンドームはサッチが貰って行ってしまった。


「ハンス!」

サブゾーはハンスを追い、呼び止めた。

「ちょっと、お茶しないか?」

「残念だが、俺はイギリスが嫌いでな。紅茶は飲みたくないんだ」

「あ、いや、紅茶じゃなくて...」

「は?紅茶じゃない?この艦って紅茶と水以外貰えたか?」

「実は、祖国から持ってきた日本茶があるんだ。飲んでみないか?緑茶って言うんだが。」

「ほう、日本茶か。って言うのは、あれか?ビールの原料から作ってるお茶か?」

「あー、それは麦茶ね。緑茶は大麦からは作られてない。まあ飲んでみれば分かるさ」


そうして彼らは休憩室へ行き、ちょっとしたティータイムを開いた。

「おー!美味いな。渋みがあるがそれがまた良いな」

「だろ?すっごい美味しいだろ?」

「ああ。これは絶品だ」

少しの間お茶を楽しんだ後、サブゾーがカップを置いた。

「でだ」

サブゾーが目の色を変える。

何かを察した様にサッチも真剣な眼差しになった。

「単刀直入に聞く。この戦争の事、どう思っている?」

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LAST RESISTANCE 〜人類最後の抵抗〜 非 非国民 @teikokukokumin

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