第1話 迎撃戦

「シュペーテ大佐、SF17の点検、終了しました」

整備兵が大きな声でそう伝えると、ハンスは少し険しい表情で答えた。

「ご苦労...」

SF17戦闘機の初陣となる今日、ムサシ級迎撃用空母内は活気に満ちていた。

しかし、それとは裏腹に、ハンスの表情は暗い。

(今更こんな機体を作ってどうすると言うのだ。この戦争の結果など、今や分かりきっているのに)

ハンスの目に希望はない。

それでも彼は、機体に乗り込み、操縦桿を握った。


「無線の確認をする。サブゾー、サッチ、異常はないか?」

「あ、あ、こちらサブゾー、問題なし」

「こちらサッチ、異常なし」

「了解。それでは出撃準備に入る。敵は現在ソレント級空母に向かって飛翔中。おそらく爆装をしているはずだ。戦い方は考えろ」

ハンスは隊員の返事を待たずに無線を切り、射出カタパルトへ機体を移動させる。

「エンジンに異常がない事を確認。これより、迎撃行動に入る」

ハンスが合図を送ると、電子版に"GO"の文字が映され、勢いよく射出された。


「目標確認。UFF3機か」

ハンスとサブゾーは攻撃準備に取り掛かる。

しかし、サッチだけは違った。

サッチはUFFと真逆の方向を見ている。

「...ん?あれは!待てハンス!それは囮だ!UFBが5機あっちにいる!」

「なんだって!?」

ハンスはサッチの索敵能力に驚きを隠せなかった。

「よし、進路を変えるぞ。囮のUFFは無視していい」

「了解!」


ハンス達が敵機の射程内に入ってまもなく、防御機銃がこちらを向いた。

宇宙空間では音は全く伝わらないため、敵の攻撃は全て目視からの反射で避ける。

彼らにとってはそれは難しいことではなかった。

ハンスのウントリセプチウム機関砲が1機のUFBを捉えた。

超重元素が高速で敵のフレームにぶつかり、少しずつUFBは原型を失っていく。

攻撃に耐えられなくなったUFBはそのまま爆散してしまった。

「すまんな」

ハンスはそう言うと、そっと目を閉じた。


「イーヤッホーーーーーー!!!」

サッチは騒ぎながら、狂ったように突入する。

機体を上下左右に揺さぶりながら、躊躇なく機関砲をぶちまけた。

発射されたウントリセプチウムはショットガンの様に散乱し、あっという間に2機を葬った。


「サッチ!危ないぞ!俺にも当たりそうになった!」

そう文句を言いながらサブゾーは特別武装のプルトニウム爆弾を敵編隊の中で炸裂させた。

サブゾーは通常攻撃も十分に上手いが、1番得意なのはこの戦法であった。

四方八方に飛び散ったプルトニウムによって、UFBの装甲は貫かれた。


「全機、被害報告せよ」

「サブゾー機、被害ありません」

「あ、あの〜、被弾はしてないんですけど、エンジンが故障気味です」

サッチが申し訳なさそうな声で申し出る。

「ちっ、当たり前だ。あんな無茶な動きするからだ。お前な、いつかほんとに動けなくなるぞ」

「はいはい、分かってますよ。すいません」


「ブルーバンブー隊、全機帰投しました」

ハンスは上官への報告を済ますと、すぐに自分の部屋へ行き、深い眠りについた。

ちなみにサブゾーは今回の戦いの分析。

サッチは酒を片手に整備兵にちょっかいをかけていた。


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